淡々と人を信じ、愛し、人との関わりあいに喜びを感じそして自分も死んでいくということ。家族に恵まれなかった孤独の人にも本当の家族はいるものなのだ。それは血の繋がりを超え本当の人と人との信頼関係にまで行きつく。
家族の光景については、古くは小津安二郎が「東京物語」で執拗に追求した作品がある。「血縁より血縁でない人にこそ真実の愛情をかけ、かけられる矛盾」を大きなテーマに掲げた作品だったが、当作品もスケール、技術、設定こそ違えど全く同質であると言える。
淡々と生きている人を見、それぞれの生活に携わり、そして人生の終局としての追い詰められたかのような老人ホームに舞台を展開させ、アン・ホイはある人物の人生最後のひとときをカメラで切り取ることに成功した。そこには小さい時から生活を共にした男のまなざしも交え、一人の老女の人生の終焉を一瞬のきらめきを加え語り尽くすのだ。
映像が終わり、黒い画面に中国語の活字が上下に流れ始めると、突如僕の目から急にドドドッと涙が溢れた。もう画面はかすんで字さえ明確には見えなくなっている。嗚咽している。感動作である。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます