ドイツ統合後の老若男女それぞれの日常を切り取った秀作です。舞台は旧ドイツトラック輸送公社から巨大スーパーへと転身を遂げ、そこで働く名もなき人たちの人生である。
冒頭の映像。曇り多き空の下、夕暮れ近き陰鬱な野原が映される。いい写真だ。彼らの心情を象徴しているのだろう。
この映画の大半はこのスーパーで働くバックヤードを実にしつこく描き込む。働くことの退屈感、繰り返しがそこにある。しかし、何をも生まないようでいてしっかりと根無し草のひとたちを結び付けている何かがそこにはあります。
淡い恋もし、諦めもするがそれでも青年は前を進んで生きる。淡々とした終わりだ。
けれど誰もが、急に自死して果てる同僚の死がこの映画のしこりとなって残るだろう。東ドイツ時代に青年時代を送った人間が、統合という時代について行けず、果ててゆく実態。実に淡い色調で描かれた彼らの日常に重い警鐘が鳴り響くのである。
でも、こればかりは、日本人である我に理解するすべのないことも一方で感じてしまう。
映画自体はカウリスマキからユーモアとエスプリをはぎ取ったらこんな感じになるかなあ、なかなかいい味わいがあります。
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