考えたら大森立嗣って、秀作が続く映画作家ではないのだろうか。「日日是好日」で、人生の深淵に少々たどり着いたと思ったら、「MOTHER」で走り過ぎ、そして本作で時間が止まったかのようなスローな慈しみを描く。「ゲルマニウムの夜」のような迸りが今となっては懐かしい限りだ。
さて、この作品、新興宗教という暴力のような病気が家庭に吹き荒れるとき、家族はどう対峙したか、というテーマを平衡感覚を持った娘たちから描いている。娘たちといっても、姉は家族から逃避し、自分を守り、ほとんど出てこないので、妹の心の襞を描いている。
妹は両親をこんな風にさせてしまった原因が自分だと思い、両親に寄り添い、じっと佇んでいる。そんな彼女の中学卒業までの6か月を描いた映画である。
ドラマとしてはあまりドラマチックな部分もなく、平穏に時が流れる。家族を守る、家族と共に生きるという強い意志があるから、彼女は全くぶれることなくその日を生きる。そしてどんな環境でも家族はやはり一本の糸で結ばれている、という自覚を持ち、このドラマは終わるのだ。
でも、何だかねえ、僕の心に跳ね返ってくるようなハンマーの音が全くない。共鳴しない。まるで僕とこの映画は関係ないようなそんな感覚だ。
こういう現象は映画を見ていてまず珍しい。たまにはこういう映画もあるよ。
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