カンヌ最高賞ということで早速鑑賞。題材的には今までのテーマを再現、という感じでしょうか。特に集大成とまでは思わなかった。それほど、今までの自作をあちこち散りばめた感が強い。
敢えて言えば、僕の好きな「誰も知らない」が一番強く関係性を主張する。男の子と女の子、そして親から簡単に捨てられる子供たち。その余韻が今でもこの作品に強く漂う。
基調は世間から、すなわち我々市井の人間から忘れ去られた人々たちに光と影を与えたことかな。この視線はこの映画の根幹である。そして家族とは何かを、繰り返し、執拗に掘り下げていることだろう。
血縁から家族を成立させている我々。苦しみも悲しみも喜びもそこに存在する。血縁ではない架空の家族に存在するものは一体全体何なのか、、。
家族で初めて遠出する海辺のシーン。樹木希林が目を細めて幸せを体感する重要なシーンである。彼女は死ぬ前に初めて感じた家族への思いである。家族5人が海辺で跳び跳ねているのを見る。美しい。実に美しい。甘美的でさえある。
けれど家族というものは時間を経て変わってゆくものなのだ。その移りゆく家族の崩壊を男の子の成長の目を通して、辛辣に映画は解き明かしてゆく。美しいものであれ、時間は止まれない。時間は男の子の乗るバスとともに、心は振り返れど、進んでゆくのだ。
過去の是枝の作品と比較するに意外とインパクトと感動と情感に淡白なようにも思える。今までの彼の作品に対して、言葉は悪いが、焼き直し感が強いと思うのだ。いい映画だけれど、ね。
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