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月に囚われた男 (2009/英)(ダンカン・ジョーンズ)  85点

2010-05-02 13:27:24 | 映画遍歴
月に一人でいること。単純な作業。話す相手ははるかかなたの地球の家族たちと身近なロボットのみ。契約の3年間もあともう少しで解放される。地球への帰還だ。家族と思い通り話せる、、。

そんなサムだが、小事故から不思議なことに見舞われ始める。ふと起きると自分の分身の男が横にいる、、。

はるか宇宙の果てで本当の哀しみを知ってしまった男。自分が自分でないことに気づかされる男。肉体はクローン。思考は誰かのコピー。3年間の減価償却を自覚してしまう男。「廃馬を撃て」という原題名映画があったが、サムは人間だと自分では思っているがすべてコピー人間だ。いや、コピー製品だ。物質だ。モノだ。だから廃馬でさえない。

それを知るときの哀しみ。これ以上の哀しみがこの世であろうか。つらい切ない映画である。『2001年~』を本家取りにしているが、あの映画以上に切ない。今まで一人ということに、その意味に切なさを感じることはあったが、自分の存在そのものがただの宇宙の一粒の塵以外の何物でもないことを知る、そんな哀しみを感じた映画はひょっとしたら初めてなのかもしれない。

ただ最後のアメリカ的ラストは少々軽すぎるのではないか、と思う。今までの哀しみがぶっ飛ぶほど驚いてしまった。でも素晴らしい映画だ。実は僕はこんな映画を待っていたのかもしれない、、。

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