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プレシャス (2009/米)(リー・ダニエルズ) 80点

2010-05-02 14:25:22 | 映画遍歴
2時間、最前列で崖のように聳え立つスクリーンに向かいながらプレシャスと心の対峙をする。彼女の心は困ったことがあるといつも楽しいところに逃げる。あり得ない仮想の場所にいつも彼女はいる。それでやっと生きるという過酷さから自分を避難させている。

半端じゃない生活空間だ。次から次へと彼女めがけて苦難が飛び込んでくる。悲劇というものを超えている。近親相姦そのものが彼女を追いつめているのに、救ってくれるはずの母親がさらなる鬼だ。それでも彼女は生活を変えないで母親と共に住む。

映画は無知がそうさせたというけれど、そうなんだろうか、、。ここで教育の話がなだれ込むと、ほんとそうなのかい?と僕は違和感を持つ。無教育が彼女をそうさせたのではない。彼女は童女のごとくその場を離れなかっただけだ。無教育な父親や母親がそうさせたのなら分る。そういう意味では無教育という無知が彼女を(間接的に)そうさせたのかもしれない。

彼女は優しい娘なのだ。けれども、いつ来るともしれない死の宣告からいつまでも童女として生きることはできない。時間がない。だから、今は、両腕に二人の幼児、乳飲み子を抱いて前を歩くしかない。それは彼女の初めての前向きの強い歩みだ。明日倒れてもいいという強い想いでしっかりと大地を蹴るしかないのだ。明日がないから明日を創るしかないのだ。

最前列の不動明王のような彼女を仰ぎ見ながらこの映画を見終わる。たった、16歳の女の子に大の大人が勇気づけられる。秀作こそこの映画に値する。

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