Ｍｙ Ｓｏｎ あふれる想い (2007/韓国)(チャン・ジン) 75点

韓国では無期懲役刑というのはその名前通り一生刑務所から出られないのか、映画では15年を経過したとき一日だけの外出許可が出る所から始まる。母親と息子に会いにその貴重な一日を過ごすことになったある男の心の動揺、しかしそれは息子も同様だった。

いいドラマだ。殺人者の子供という汚名が息子に及んでいないか、男は気を病む。息子の方も当然15年という歳月の戸惑いを隠せない。打ち解けない会話。だが、血は時を超える。だんだん父親と息子の関係がほぐれてくる。

その心の融解が二人のモノローグを通じて観客に伝わってくる。多少説明過剰ではないか、とも思うが、コミカルな描写とも相まってじわじわ僕たちの心が暖まってくる。

だが、【チャン・ジン】監督、この崇高なお話を最後に大逆転させて見せた。

これはなあ、うーん、何といっていいのやら、今までの人の心の融解というテーマが一挙、一瞬無になってしまう感がする。

この部分は、映画的にはとても面白く、厚みも持たせた気がするが、正直あり得ない話になってしまったことも事実なのだ。こういう展開だったら、今までの二人のモノローグはすべてリワインドしなければならなくなる。そうすると、何かちょっと違和感のあることの多いのにも気付くのだ。

刑務所に戻る男にもかなりの変化はあるはずなのに、映画は高校生が面会に行っても男の暗さは見せない。これは変だなあと思う。息子の存在だけが生きがいだった男なのだ。変わらないはずはない。

でも、2時間弱この擬似親子関係は強く僕たちに血縁というものを見せてくれた。ラスト近くの強い違和感も、終わってみればはらりと涙が流れ、その説得力のある演出力を背景に韓国映画の水準の高さを見せつけてくれるものになっていることに気づく。

いい映画だと思う。しばらくは忘れられない映画になろうと思うのである。