2006年江戸川乱歩賞受賞作である。シベリア捕虜収容所の悲惨な実態が目を引く。ミステリーとしては少々物足りない気もするが、30万人という収容人数を考えるに、 歴史上忘れてはいけない事実であることを強調している著者に何やら強い親近感を覚える。
元シベリア抑留兵が書いた手記と俳句という突拍子のない設定は面白い。それを本にしようとする冒頭のとっかかりもワクワクする。
しかし、60年前を現代に蘇らせる肝心の殺人事件が動機付けが弱く現実感がない。抑留時の殺人もこのトリックは少々無理感を伴うなど読ませる小説なのだが、ミステリーとしては少々弱い(江戸川乱歩賞受賞作ではあるけれど)。
でも何かしら心に残る小説ではあります。文章も出来ている。いわゆる一気読みでありました。
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