視覚障害者のための映画音声作成が現場の映画である。稀有な題材で興味深く観る。河瀬の映画だから自己本位というか、独断に満ちている。それでも
今回は光というところに焦点を絞り、人間の営みの原点へといざなおうとしている。その試みが成功したかどうかはどうかは別として、生きてゆくうえで希望というものが、それがささやかなものであるとしても、最低限必要なものであるということは分かる。そこがこの映画のきらりと光る部分である。
ただ映画としては、そこに出現する恋愛にしても、カメラマンの同僚たちとの嫉妬にしても、またラストの観客席にいる視覚障害者たちの表情にしても実に不自然で、河瀬の思いが強いほど、逆に映画としては居心地が悪くなっている。
でもこれはずっと彼女の映画を見てきていると定石通りであり、気にしないことにした。
相変わらず風にうごめく奈良の山々を映す映像は冴え渡り、彼女はずっとこんな自然におびえもし、また賛辞もしたのだった。永瀬正敏の演技ははっとするほど内面的だが、オーバー気味。だが、頑張っている。
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