終戦近い特攻隊員と島の娘との恋愛物語である。この島で、海軍が秘密の作戦を画している。まるでポエムのような話だが、この島独特の神がかった地域性と特高の心情が豊饒に浄化し、当時の生死観を強く彷彿させる。
二人以外の俳優陣をまるで現地の人間ではないかと思わせるほどの無名の俳優を使ったのがまず成功の因。この島に伝わる唄もよろしい。
但し、素晴らしいのはそこまでで、この神々しい恋愛をいざなってくれるはずのカメラワークが単純で、どうも今一歩のところで、乗れずじまいの観を呈している。死へいざなうモーションが不足しているのだ。
演技的には満島ひかりが最初から100%の演技で疾駆するが、対する永山絢斗の演技は彼女を受け止めるには軽すぎて、バランスが取れていない。また、島の子供たちの演技も濃くはない。外国映画との比較でも、日本映画は子供には甘いかなと思う。
ラスト10分間は、それでもなかなかの感動もの。奇跡ともいえる生の甘受は、戦後70年間の日本そのものを醸し出しているのだろう。そういう意味では秀逸な映画だと思う。
それにしでも、館内は平日の昼の時間なのに立ち見の方もいる程の熱気。今年は不思議な夏である。
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