テレビ版「碑」は遠く我が10代の頃に見た。杉村春子が朗読し、沸々と湧き出る感動ものだったのを今でも思い出す。当時は広島テレビが毎年恒例にこの手の原爆ドキュメンタリーを製作していた。その一つだった。
映画版は綾瀬はるかなので、正直まっすぐ過ぎて、またかなり違ったドキュメンタリーになったと思わざるを得ない。でも、こういう清楚で素な語りもまたいいと思った。やはり俳優の人生が色濃く出るのである。そこが映画なんだ。
旧制広島二中の1年生321人が全滅した一人一人の人生最後の日々を綾瀬が語る。ほとんど被ばくしてからの息も絶え絶えの最後の言葉が心に沁みる。母親、父親の優しい慈しみの心根もストレートに伝わる。
むごい話である。でも、我々は知らなければならない。もはや逃げることは許されない。
ラスト近くに、彼らの学校生活が映像で写される。みんな明るい笑顔だ。ひょうきんな子供たちだ。すると急にどっと涙が溢れる。あとは映像は僕の眼の中で乱れ、洪水になる。
現代に『いしぶみ』をよみがえらせた功績は大きい。是枝裕和の良心を誉めたい。
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