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アフター・ウェディング (2006/デンマーク=スウェーデン)(スザンネ・ビア) 90点

2008-01-03 22:11:44 | 映画遍歴
北欧は空気が薄いのであろうか、陽光も鈍く散乱しているように感じられる。映画史的にも秀作の多い北欧にベルイマンの片鱗を感じる作家を見る。
今までの作品と違いまず金をかけていることに気づく。屋内の限られた人間劇から一応インドからデンマーク、また屋外へとカメラも移動し、閉鎖的な映像から開放された広がりを見せている。
だが、視点は変わらず一定で、北欧の空気を感じさせる愛と生とそして誰にも均等に訪れる死がテーマである。

本作は結婚式に思いがけず参列してしまう男の冒頭のシーンがまず秀逸である。映画の起承転結を良く分かっている監督である。観客を一気に映像に引き入れ、しかもブルジョアの10億円以上の寄付という庶民には理解できない何かミステリーじみた展開から結婚式の花嫁のスピーチでこの映画のストーリーの様相を大体分からせるところ、かなりのテクニシャンでもある。
また、顔の超クローズアップ、特に顔の目の部分、逆に顔の口の部分が映像いっぱいにしかも多様に映されるのを僕は初めて見た。相変わらずかなり大胆なカメラワークである。

親と子、夫と妻、突然死刑を言い渡されるような絶望しかないがん宣告、それでも続く彼らの人生。それらは映画が、文学が、演劇が永遠に描き続けている主題でもある。
今までの作品と違い贅沢に作ってあるせいか少々通俗的でメロドラマ的要素も強いが、それでも娘が義父の死が近いことを聞き義父と話をするシーン、義父が妻に死への不安を強くわめくシーンは映画史的にも記されるべき名演出である。
死だけは誰にもやって来、逃れることは出来ないということですね。

また、男が慈善の名のもとで気に入っている子供を安易に引き取ろうとして拒否されるシーンもなかなかいい。人間は年齢・人種・生活程度に関わらず本来自由であるべきなんだ。人間は人の所有物ではない。こんなところをさらっとラストに持ってくるところ、少々アメリカ商業主義を見始めている監督の視野も垣間見えるが、本年屈指の秀作であることは間違いない。

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