オストルンド、スウェーデンの若き映画作家だとは言っても、かのベルイマンを凌駕する作品をまだ提供しているわけではない。でも、才能は感じる。ブラックユーモア的な視点で見つめた人間模様。それはおかしい。それゆえ、卑近過ぎて自分が十分俗物なのを知ってしまう。
まず、ディキンソンのファッションモデルオーディションシーン。くすくす笑いたくなる、今までこういう捉え方ってなかったよなあ。面白い。
次に恋人との割り勘戦い。これは、さらに俗的で人間の本心というか、お二人は完全に戦争してると思う。
そしてとても長くはあるが、豪華観光船に乗ったブルジョアたちと底辺労働者たち(アジア系が多い)とのヒエラルキー描写。ここに突然、マルクスが出没し、共産党宣言(能力に応じ働き、欲望により受け取る)が言い放たれる。
人間、もうここまで腐り切ったらもう死ぬしかないよと思われる、まさにブニュエルさえ慄くような、現代人の醜悪さをこれぞと見せつける。そしてそのあげく、観光船はテロに会い、難破して数人だけ生き延びる孤島の原始共産制が描写される。
何とも、明快でシンプルなことか。全体的に、上から目線が全くないことがこの監督のいいところかと思う。実に楽しませてもらいました。でもこの原始共産制描写は映画としては実は真新しくはない。そこをどう捉えるか、かなあ、、。
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