好きだなあ、この映画。2時間近くしっとりと心の渇きをひたひたと癒してくれるかのようなひと時を過ごしました。それは神田神保町というちょっと黴の匂いのするレトロがほのかに感じられる空間を切り取っているからなのでしょう。
冒頭はジコチューの現代女とこれも軽めの現代男性とのデート食事場面。食事も食べず男性に一気にしゃべり続ける女に辟易する男。男は女に別の女との結婚を決めたことを告げる。でもすぐそのあと男は、食事後今日はどちらの部屋でセックスをするの、と普通に質問する。いくら何でも、と女は生身の女に戻ることになる。このシーンは秀逸。
この若い女と男は別に変った連中でもなく、現代に生きる普通のカップルなのだろう。けれど意外と女は男との恋愛の妄執に負け、会社を辞めてしまう。意外と古い女でもあったのだ。心配した母親は伯父の店にしばらく面倒を見てもらうことになる。
これからがこの映画はよくなるのだ。シーンは閉鎖的で、ただ小さな狭い古い古本屋での店内の様子が映されるだけだ。古くなった本もひっそりと店内で生きている。女は時間を過ごすうちにそういうことも分かってくる。今まで読んだことのない作家の本も手あたりしだい読むようになる。
古さが好きな人たちが集まる町、神田神保町。よく行ったなあ。映像の端々の町の風景が懐かしい。匂いも伝わって来そうだ。女の癒しのひと時であるはずだった。
しかし、たまたま町で男を見かけてから女の心のほころびがどどっと広がってしまい、彼女の心は洪水になってしまう。失恋をしたわけでもないのに(恐らく本当の恋愛ではなかったろうに、、)ほころびを食い止めることができない。心配した叔父は男の下に談判をしに行く。
このシーンはちょっと違和感を伴う。だいたい女も男も軽さでは同類の人間なのだ。そもそも恋愛というものは安定というものからは一番離れているものなのだ。女と男の色恋沙汰に他人の力は本来は必要ないはずだ。
でも女は心のほころびを男にぶつけることでやっと危機から解き放たれる。そして新しい生活を求め神田神保町から出ていくことになるのだ。
ざーっとストーリーらしきものを書いてしまったが、この映画の染みわたるような良さは2時間近く、ただ神田の情景を丹念に写し取った映像である。ここにある映像は人の心に沁みわたり、乾いた現代人の心をうるおわせてくれる。別に映画館に居る僕は特に孤独を感じているわけでもなかったが、この映画を見ている間は不思議と心が落ち着いていることに気づく。これは希有な経験である。
でも、これがこの映画の魔力というか、実力なのだろう。ほとんど何か動的な話があるわけでもないのに、映画からの読後感はすこぶる充実している。人間、たまに何かに触れて何かを想う時が必要なのだなあ、、。秀作。
冒頭はジコチューの現代女とこれも軽めの現代男性とのデート食事場面。食事も食べず男性に一気にしゃべり続ける女に辟易する男。男は女に別の女との結婚を決めたことを告げる。でもすぐそのあと男は、食事後今日はどちらの部屋でセックスをするの、と普通に質問する。いくら何でも、と女は生身の女に戻ることになる。このシーンは秀逸。
この若い女と男は別に変った連中でもなく、現代に生きる普通のカップルなのだろう。けれど意外と女は男との恋愛の妄執に負け、会社を辞めてしまう。意外と古い女でもあったのだ。心配した母親は伯父の店にしばらく面倒を見てもらうことになる。
これからがこの映画はよくなるのだ。シーンは閉鎖的で、ただ小さな狭い古い古本屋での店内の様子が映されるだけだ。古くなった本もひっそりと店内で生きている。女は時間を過ごすうちにそういうことも分かってくる。今まで読んだことのない作家の本も手あたりしだい読むようになる。
古さが好きな人たちが集まる町、神田神保町。よく行ったなあ。映像の端々の町の風景が懐かしい。匂いも伝わって来そうだ。女の癒しのひと時であるはずだった。
しかし、たまたま町で男を見かけてから女の心のほころびがどどっと広がってしまい、彼女の心は洪水になってしまう。失恋をしたわけでもないのに(恐らく本当の恋愛ではなかったろうに、、)ほころびを食い止めることができない。心配した叔父は男の下に談判をしに行く。
このシーンはちょっと違和感を伴う。だいたい女も男も軽さでは同類の人間なのだ。そもそも恋愛というものは安定というものからは一番離れているものなのだ。女と男の色恋沙汰に他人の力は本来は必要ないはずだ。
でも女は心のほころびを男にぶつけることでやっと危機から解き放たれる。そして新しい生活を求め神田神保町から出ていくことになるのだ。
ざーっとストーリーらしきものを書いてしまったが、この映画の染みわたるような良さは2時間近く、ただ神田の情景を丹念に写し取った映像である。ここにある映像は人の心に沁みわたり、乾いた現代人の心をうるおわせてくれる。別に映画館に居る僕は特に孤独を感じているわけでもなかったが、この映画を見ている間は不思議と心が落ち着いていることに気づく。これは希有な経験である。
でも、これがこの映画の魔力というか、実力なのだろう。ほとんど何か動的な話があるわけでもないのに、映画からの読後感はすこぶる充実している。人間、たまに何かに触れて何かを想う時が必要なのだなあ、、。秀作。
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