ここには一瞬の出来事で家族が北と南に分離させられた人間の苦悩が根底にある。子供とはいえ、父親がいない男の子は家長となる。そんな普通の男の戦後65年の生きざま、すなわち韓国の戦後史(正式には休戦中だから戦後ではないが)を輻輳させながら紐解いている。
家族(国家)の分離、ドイツへの出稼ぎ、ベトナムでの戦争の真実、、。どれも一つ一つ重いものだ。それをドクスはひとり胸に秘め、誰にも相談せず、咀嚼する。なぜなら彼は父親から言われた言葉を常に忘れず守る。母親にも言えず、いつも家長たろうとする。
ラスト近く、探し求めていた妹と再会するシーンはほんと号泣してしまった。周りに人がいなかったら声を出していたかもしれない。この、国家の分断という経験は日本人は経験していない。まさに想像を絶するものがある。
そのラスト、ドクスは父親と夢で出会う。やっと本来の子供に戻るドクス。ずっとこらえてきた気持ちを父親に託す。父親に抱かれ泣きたかったのは今や老人となったドクスとはいえ、子供のままのドクスなのだ。いやあ、このシーンは泣かせるよな。
万遍なく見られる映画ファンを意識してか、作品的に少々甘い部分もあるが、どうしてどうしてこの韓国戦後史だけでずしんと重い。この65年は韓国の人たちにとって日本人とは違い今だに他人事ではないのだ。感動作であります。
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