
自分がそうだったらどうだろう、とかいわゆる身につまされる話である。こういう映画を見る人は今幸せな人に違いない、と薄々僕は思ってはいたが、そんなつまらない思いを吹っ飛ばす秀作でありました。
二日間の休みの間に同僚たち一人一人に「お金を諦めて私を助けてください」と言い回る話である。病気で休職していたからこそ、休み中に同僚に無理をさせていたお詫びもないまま、虫のいい説得を続ける女性の話である。
だから彼女も途中でもうやめようやめようと思ってしまう。発破をかけてくれる夫とはいえ、4か月も愛のない生活を送っている。仕事も気になるが、自分の愛の問題も多少気になる彼女である。
でもそんなこと言ってられない。と、だんだんやさしい夫が本当にやさしくなってくる。これぞ本当の男の優しさである。
一人一人同僚と会っていくうち、相手の人生もおのずと見えてくる。労働者たちの話だから、そんなに裕福な人たちはいない。中には臨時工の人もいる。人生の陰影がくっきり明確である。うまいねえ。リアルだ。
これが日本(映画)だったらこうはいかないだろうなあと思う。ベルギーの人たちは少なくとも映画では短絡思考ではない。
ラスト、どうなるんだろう。うまくいくと映画にならないだろうなあと思いながら、なるほどそういうラストか。ヒューマニズム。
でも彼女はこの苦しい過程で、人生で一番大切な夫と家庭を取り戻した。これ以上幸せな女性がいるだろうか、、。
感動がじわじわ後で重なってくるいい映画です。
セントさんのレビューをみて、京都シネマで公開しているうちに、観にいこうと思いました。ダルデンヌ兄弟の映画は好きですし。
最近、結構京都に通ってるんです。京都文化博物館の古い映画が面白く、感心しています。そのうちに京都シネマにも。
この映画、ダルデンヌ兄弟の映画にしては最後まで一気映画でした。素朴なんですよ。
もう超一流女優であるマリオン・コティヤールにして薄化粧(ひょっとしてノーメイク?)させ、しかも衣装といえる代物ではないリアリズム。
ベルギーの国情は知りませんが、何か古い日本映画を見ている映画でもありました。(というか、それこそ現代日本なのかな?)
感動作です。見てください。
それでは、また。