セントの映画・小演劇 150本

観賞数 2024年 映画 92本、 演劇 70本

4分間のピアニスト (2006/独)(クリス・クラウス) 90点

2007-11-20 21:56:11 | 映画遍歴
2時間緊張感の漂う一流映画だけに与えられる映画的高揚感を久々に味わう。
老女と若い女。年齢は離れていても双方人生に耐え切れない絶望感を抱いている。二人に共通するのは音楽へのほのかな光だけ。
壮絶な精神との戦いに観客である僕たちさえへとへとになる感覚を覚えてしまった。人間の闇への深遠に紡いでゆく演出の見事なこと。映像のタッチが常に冴えていて人間の暖かささえ拒否しているぐらいだ。
ドイツでは今でもやはり歴史を問われている。ナチスの影が現代にも及んでいるのだろうか。若い女も父親からの近親相姦、身ごもった子供は体制の都合で死産させられるなど現代のナチス状況と変わらない生き地獄をしのいで来ている。
年齢は、時代は離れていても過酷な人生という意味ではまったく二人は同じである。その二人の再生への過程が描かれるが、特にラスト4分間のピアノ演奏はものすごくパワフルで壮絶だ。震え上がるとはこのことを言うのか、彼女の心の叫びがそのままストレートに僕の心に響いてくる。
この若い女の心情は現代日本でも内容は変われどもある程度みんな持っているものではあるまいか。僕も若い時、こういう心の叫びを毎日抱え込み、酒に音楽に小説に女に、また映画にのめり込んだものである。まさに生きるってこういうことなんでしょう、、。
久々に僕の心にぐいぐい入って来てしまった秀作を今日見たことを記す。

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