
人類最後の6日間を、真綿で締め付けるように荒い白黒の映像と驚くべき終末の風の音で描き切る。人は最後をどう生き、どう死んでゆくのか、、。
とにかく2時間半、自然の高ぶりを感じさせる風の音がすごい。家に中に入ってもそれは消えることはない。
一日目。荒れ、吹きすさぶ風の中、仰角の馬の姿がものすごい。娘の髪もたてがみのごとく横にたなびいている。粗末な家に戻り父親の衣服を脱がせそして粗末なジャガイモを食う。それが穏やかな生活のすべてでさえある。そしてふと彼らは虫の音がしなくなることに気づく。過酷な終末の始まりである。
二日目。外に出るのもやっとの強風の中、井戸に辿りつき水を汲む。馬はてこでも動かなくなる。そして酒を無心の来客が来る。彼は世界の終末を訴える。
三日目。馬はエサも食べずすべてを拒否するようになる。アメリカに行くと告げる流れモノたちが水のお礼にと本を一冊娘に渡す。娘は最後の読書を始める。
四日目。いよいよ井戸の水が枯れ尽きる。馬はエサどころか水も飲まなくなる。父娘は新天地に向かうがどこにも行くところがなく戻って来てしまう。
五日目。家の中のランプが油があるのにもかかわらず突然切れる。後は暗闇があるのみ、、。
六日目。いつもの食卓についた父娘だったが、彼らも世界の終わりを感知する、、。
人は生まれそして死ぬ。人は死ぬとどこに行くのか、人類はそんな命題を解決しようと目論見、神の存在を作り上げた。そしてニーチェが言うようにこの世において「神は死んだ」のである。冷厳な【タル・ベーラ】のまなざしがこの映画にある。人はどこに行くのか、、。
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