この映画のみそはラストの「保護者遺棄致死」という罪状だろう。愛する人と長期車上生活をし、病死させたらこういう罪になるらしい。ある意味これが社会的警鐘にはなっているが、この映画のテーマは愛である。男女の愛である。
ある夫婦の話である。しかも実話らしいので、この生き方が正しいかどうか云々、は言えない代物になっている。分かるのは妻が残り少ない人生だと知った時のある夫婦の愛のあり方を見つめた作品だと言うことだ。
再発したがん治療で苦しんできている人を僕たちは何人も知っている。病院に入院したからといって、または入院して抗がん剤治療をしたからといって、本人は本当にがんと闘っているのかどうか(要するに抗がん剤の苦しみと闘っているのではないか。)、という見方も世の中にはある。
妻は病院に夫と離れたくないからとして入院を拒否する。だんだん体力の落ちていく妻を見るにつけ夫はこれでいいのか悩む。長くなった車上生活。紙おむつまで夫が替えてやる。抵抗する妻。哀しい。でも本当の愛の姿がそこにある。
ずっと狭い車で生活する二人。洗濯、料理、風呂など通常当たり前のものが欠けている生活だ。臭いも濃厚だろう。垢まみれの二人だろう。でも、美しい。そこには本当の愛の姿がある。
拘留後、青いボンゴを見つけ即、愛しいものを抱くようにぐるぐる薄汚れた蒲団を抱きしめる夫。娘に頬を叩かれやっと自分に戻る夫。【三浦友和】の壮絶な演技が光る。ひょっとして彼の主演映画で、これほど演技を要した作品は今までなかったのではないか、、。俳優冥利に尽きる役柄である。
これも一つの夫婦の愛の姿なのである。後々余韻が残る。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます