原作は繰り返し映画化された、恐らく女性の方は少女の時に読破された方も多いのでは、と思われる世界文学である。ただ、「嵐が丘」は読んでいても僕はこの作品は未読でした。
構成としては嵐の中を命からがら逃げて来て九死に一生を得るジェインの劇的な描写から始まっている。なかなかうまいね。この作品の動的な印象を予感する出だしだ。イギリスの膨大な自然の描写も鋭く素晴らしい。
そしてこの世界文学たる所以の、不思議でミステリアスな一代女性記が始まるのだ。女性目線の作品である。そのため当主の【マイケル・ファスベンダー】が一体全体何を考えているのか分からない設定を形作っている。
ある意味ホラーー的な要素でもある正妻軟禁をこの映画では色濃く出さず、【フクナガ】はあくまで【ミア・ワシコウスカ】の心理状態を主に、観客との一体感を試みている。
そしてそれは成功している。繊細でダイナミックな演出方法。激しいイギリスの自然。女性としての自立という当時としても重要なテーマが現代においてしっかりと復元されている。
私的なことを言えば、僕は【ミア・ワシコウスカ】を見るためにこの映画を見た。前作 『永遠の僕たち』の、死期を知っても明るく振る舞い、それでいて醒めた演技で素晴らしいの一言だった彼女を見に来た。それは前作『アリス・イン・ワンダーランド』でも同様のイメージだった。
しかし、この作品では彼女はがちがちに演技している。勿論的確で鋭い演技なのだが、今までの彼女のマシュマロ的なイメージがなくなっている。そこにあるのは【フクナガ】に徹底的に鍛えられた女優【ワシコウスカ】であった。
それもいいけど、彼女には演技をさせない、それだけで十分な魅力のある何かが満ちているはずなのだ。今回はそれが見られなかったなあと僕は思っている。
作品としては世界文学を原作にして少しも媚びることなくいい文芸作品になっていると思う。この原作が『レベッカ』に影響を与えたのもよく分かる。すばらしい映画でした。
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