リストラ請負社に勤める凄腕社員を主人公にした第2弾。
またまた面白い。何かなあ。人の深いところでの心根が鋭く描かれているからかなあ。女性の気持ちもうまく描かれている。あまりに詳細でリアルなので、作者の垣根涼介はひょっとしたら女なのではあるまいか、と思ったほどである。
特に中ほどのこの短編集の題名にもなっている「借金取りの王子」は電車の中で読み終わったが、不覚にも泣いてしまった。感動篇でありま . . . 本文を読む
この映画はふとひとがどこか遠くに行きたい、そう思ったとき潮風に吹かれる海岸をぽつんと歩いている自分を感じる映画ですね。
まず、そういう癒しの素敵な場所でも、人によってはただ退屈のきわみにしか思えない場所でもあることを、よりによって冒頭で蒼井優さまに演じさせている。食べ散らかした優さまはポテトチップスの袋をゴミとして風に漂わせます。その日常と非日常の恐ろしいまでのギャップをまず最初に示す。
そし . . . 本文を読む
この世界的大不況で、今やアメリカでも見直そうとしているタックスヘイブンの金融機関を焦点にしたクライムアクション映画だ。銀行が武器を売りつけたり、平気で殺人マシーンに暗殺依頼したりするなど、こんなことゴルゴ13だけの世界だと思っていたら、意外やモデルがあったそうで事実は小説より奇なりです。
この映画、冒頭の導入部からはっとする仕掛けでわれわれを映像にぐいぐいと引き込んでくれる。まあ、ちょっと足跡か . . . 本文を読む
医療へのさまざまな問題提起を内包しつつ、脱力系軽妙タッチで秀逸ミステリーに仕上げた中村義洋の手腕は鋭く、彼の作品はどれもそうだが、人間へのいとおしさに満ちていることに気付く。
その緩やかなテンポがいいんだな。竹内結子は主役というより観客と同一のまなざしで出来ごとを追う。慢性自殺患者の救済というちょっとした本業の紹介はあっても、彼女の視点は僕たち観客と同化している。阿部寛も2作目ではトーンを落とし . . . 本文を読む
そもそも予告編で勘違いしたのがいけなかった。というのもトムが西側の工作員で、ヒトラーを狙う刺客ぐらいに思っていたのだ。だから、あの、ナチスの要塞にどうやって侵入し、どうやって脱出するのか(ヒトラーが暗殺されていないのは当然ながら分かっているから)興味深々でスクリーンを見ていました。
結果は普通のクーデターもので、少々サスペンスめいたものはあったが、どきどきするほどのものではなかった。やはり、トム . . . 本文を読む
想像していたより快活なドラマであり、政治映画にありがちな、観客に政治的感覚を要求させるような映画では決してない。むしろボクシングの4回バトル戦を見ているような、ある意味スポーツ感覚で見られる映画とも言える。
とはいえ、ニクソンがアメリカ大統領では唯一弾劾された人間だということ、そしてその直接の原因がウォーターゲート事件で盗聴を指示していた張本人だったということぐらいは知識で知っておかないと話にな . . . 本文を読む
リストラ請負会社に勤める凄腕面接官が主人公。この時代に読みたくないような内容だが、どうしてどうして、つらいハナシではなく、とても明るくそしてやはり厳しいハナシだ。
こんないたたまれないハナシを興味津々と読み進められるのは作者の社会への明晰な分析と何よりも人間へのたゆまない造詣のなせるわざかな。
ミステリー以外は最近小説を読んでいなかったので、僕にとってはとても新鮮だったし、何かすっぽりと普通の . . . 本文を読む
とんでも怪作と結構づけ、独り愉しんじゃいました。まあ、だいたいアメコミものでしょうから、原作がどうなのか全く分からないですが、今までの歴史転回点に超ヒーローが画策していたなんて、その発想がまずいい。
ところが最初にヒーローの一人が殺されてからまどろこしい展開に付き合わされ、その、「行っては戻り」のゆらりゆらりのとろーいリズムが変に気に入ってしまい、スターの一人もいないB級俳優たちの意地のようなも . . . 本文を読む
何か古く1960年代のノスタルジーを深く感じさせる映画を垣間見た気がする不思議な映画であるが、その甘さとは別に、映画を題材に、映画とは何かを主題にしたその突っ込みどころは、これが初演出のチャン・フンの映画構築の大きさを物語っており、なかなか微笑ましいものはあった。また映画への噴出力がそこには感じられる。
リアルな映画って、何? リアルな映画でもやはりそこにあるのは完全なる虚構だということ。僕たち . . . 本文を読む