地方病、風土、寄生虫

2018-07-28 12:23:12 | 生活

最近興味のレンジが広がりすぎて収集がつかなくなりつつあるムッカーですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?

 

そのうちの一つが風土病や寄生虫なのだが、特に印象的なのが日本住血吸虫の発見とその後の展開である(ちなみに、最近調べている理由ではないが、大元は「ひぐらしのなく頃に」で興味が持ったのが始まりだ)。詳しくは有名なwikipediaの記事もあるので(まずは)そちらを見てほしいが、この寄生虫とそれによる症状(腹水や肝硬変を経て死に至る)は、日本においては甲府盆地や広島、北九州の一部という極めて限られた地域でのみ見られ、特に甲府のそれは「そこに嫁にやるなら棺を持って行かせろ」というような歌が歌われるなど、恐るべき地方病として認識されていたようだ。しかし明治期になって調査が進むと、寄生虫によるものとして感染経路が様々調査され、それがミヤイリガイという小さな貝を中間宿主とし、経皮感染する(端的に言えば、水に足をつけただけで寄生される)という当時驚くべき方法で体内に入り込むものであったことが明らかにされた。

 

さらに私にとって驚くべきだったのは、様々な場所に生息するミヤイリガイを撲滅するために、用水路のコンクリート化は元より、土地の開発を進めて水田を果樹栽培に切り替えていき、それが今日の山梨の産業と景観を形作っているということであった。山梨とぶどうについては小学校の社会などで習って以来記憶に残っているが、それがかような歴史的由来を持っているとは・・・現状がただ自然環境を元に惰性で成り立っているわけではなく、それとの闘いの中で作り上げられてきたものだということを認識し、深い感慨を覚えた次第である。

 

前にも書いたように利根川だって江戸時代に洪水対策で流れを変えられた経緯があるわけで、今見えている「自然」が手付かずのものであるとの考えはナイーブだ、というのは十分わかっていたつもりであったが、自分の認識が甘かったと言わざるをえない。なるほど古代ギリシアは穀物栽培に向かないがゆえに商業メインで活動したし、その他にもブリテン島と羊毛、オランダの干拓と農業、華北と江南の気候の差異&農業の違い・・・といった具合に地形・気候と農業・産業はつい直結させてしまいがちだが、山梨の例のような歴史的営為という要素も考慮する必要があるという意識が希薄であっていたように思える。そのような気づきを得ることができたという意味で、日本住血吸虫の発見とその後の展開についての学びは大変意義があるものであった、と言えるだろう。

 

ちなみに、今述べたことについてはドキュメンタリー番組があるので興味がある方はどうぞ(ただし、第一部は解剖のシーンがあるので、苦手な方や食事中の方は避けることをお勧めする)。 

 

 

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