湖に君は身を投げた 花の雫が落ちるように 湖は色を変えたのさ 君の瞳のエメラルド
そんな大昔に聞いた歌が頭の中に去来するほど、その神秘的な風景は私を魅了した。一体、ここは夢か現か・・・強烈な眩暈に苛まれながら、それでも坂を上り続けると、やがて視界が開けてきた。
左手には平野が垣間見える。
なるほど西洋の城は、ハイデルベルク城やホーエンツォレルン城がそうであったように、山や丘に作られるものであるから、このロケーション自体を特殊とは言えまい。さりながら、現世と隔絶した環境を目の当たりにすることで、ノイシュバンシュタイン城とはそれ自体で完結するものではなく、このロケーションあってのものだということは強く印象づけられた。一体、アルプス山脈を背にしつつ豊かな森に包まれたこの城が、異界の象徴でなくて何だというのだろうか?
ルートヴィヒ2世という男が芸術に傾倒した人物というぐらいのことは知っていたが、それでもこの城を構想・建造したことには、たといそれがバイエルンという国の財政に大きな負担となり、財政破綻の危機すら惹起したとはいっても、畏敬の念を払わずにはいられぬ心持ちになったのであった。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます