ステーキ屋で隣の残り物が処理されていく。どうせ無駄になるなら俺に寄越せ、と思う。大学ではフットニックというスポーツカフェで置きっぱなしになっている残り物の飯を掠め取るという「スカベンジャー事件」を起こし、外食先で飯を残す母親には「食える分量を考えて頼めよ」と説教、会社でバイキング形式の飲み会があれば残り物を回収して帰る…今回対話の題材となるのは、その行動の背景についてである。
(登場人物)
B=バカボコ S=スメルチン
B
さて、今回は残り物に対する姿勢についてですが、「食え、残すな」という題名が「祈り、働け」を意識したものですから、禁欲や清貧が関係しているのかと思ったのですが、どう考えても別物ですよね。むしろ貧乏性なだけの気がしますが…
S
貧乏性というか無駄が嫌いなんだと思います。だって美味いものにはお金をかけて当然だと思ってますし。また、コンビニよりスーパーが好きとか、ゲームや本も基本的に中古で買うあたりもその一環ではないでしょうか。これは、「同じものなら安く済むほうを選択する」という意味で無駄を嫌うと言えます。
B
それにしても、飯屋で他人の残したものを食べたり会社のバイキングの残り物を袋に入れて持って帰るなんて…プライドが傷つかないんですか?正直私なら恥ずかしいんですけど。
S
恥ずかしい行為だとみなさんが認識しているのはわかってますし、自分の行為が胸を張れるものだとも思ってませんよ。まあ一つは、自分のお腹が減っているのに目の前の飯が処理されていくのがムカつくという生理的なものでしょうね。そしてもう一つは、それがあれば明日以降の飯代が浮くのに、むざむざ捨てられていくのが我慢がならないという経済的な感覚です。要するに、私の場合はその二つが他者の認識に優先する、ということですよ。
B
へぇ。そういえば、自販機に毒物の入った缶ジュースが仕込まれて…なんて事件がありましたけど、あなたの場合もそれで殺せるって寸法ですね?
S
道端に落ちているものや置いてあるものを食ったり飲んだりしようとは思いませんよ。その代わりというか、自分や相手が目の前で落としたものなら普通に食べれますし、相手の食べ残しなども平気で食べれますね。
B
病気の危険とかって考えないんですか?
S
ああ、同じようなことを何度か聞かれましたよ。まあゼロじゃないですけど、その疑問に関しては別の点に興味がありまして。例えばあなたは、滅菌してたら私のように残りもの食べます?
B
いや、食べないと思います。
S
ですよね。これに関しては、「そこまでして残り物を食べたいと思わない」という部分が一番大きいでしょう。食器などの例にもあるように、他人のものに触れたり使用することに対する生理的嫌悪感、高取正男言うところの「清潔ではなく潔癖」の感覚が働いてるのではないかと思います。彼らはあたかも科学的理由で危険であるかのように言うのですが、実際には彼らの疑問の根源は生理的なものにあって、それに気付いてないか隠蔽しているのと考えています。
B
う~ん、ちょっと大げさに考え過ぎな気もしますけど…それはさておき、「食え、残すな」という命令形からすると、あなたは他の人に対してもものを残すべきではないと考えているのですか?例えば「世界では飢えている人がたくさんいるのに食べ物を残すのはけしからん」といったような。
S
そういう考えはないですね。それってだいたいは単に子供をしつけるためのレトリックじゃないですか。つまりは問題のすり替えですよ。だからもし自分がそう言われたら、“Very well! By all means let them have it!”とか言い返してやりますね。
B
そうすると「食え、残すな」というのは、あなた個人の行動原理なんですね。
S
そう言えると思います。だから大げさな話ですが、ボランティアなどへの発展性はないですね。
B
そうすると、やはり単に意地汚いだけじゃないですか?
S
そういう感覚はわかりますよ。ってどう説明したらいいのかな……たとえば、余所の食事に招かれたとしますよね。そこでの余りものを自分から持ち帰ろうとする人がいれば、間違いなく私は引きます。なぜって、それは「他人の所有物」ですし、また残り物はたいてい次のご飯などに再利用されるからです。一方で、すでに運ばれてしまったレストランの食事はすでに彼らのものではありませんし、また再利用もないのですから、別に私が処理しても問題ないでしょ?いつでもやるわけではないんです。
B
しかしレストランとは言っても、例えば会社のバイキングとかだったら場の雰囲気というか周りの目ってのもあるでしょ?そういうのは気にしないんですか?
S
ああ、そういうのですか。何か適当なことを言って誤魔化しておけばいいんですよ。例えば私が実際に言ったことがあるのは、
「そんな大量に飯を持って帰るの?」
「いやあ家に大食いのペットがいまして」(いかにも言い訳っぽく)
「へえ、ペット飼ってるんだ」
「ええ、ここに」(と言って自分の腹を指す)
まあこんな具合でアホな話をして煙に巻いておけば無問題(笑)それによって「おもしろい」と思わせれれば、何か話が出ても「あれはあれでおもしろいからOK」という事になるという寸法です。要は、周りが不快にならないよう一工夫してやればいいわけですよ。飲み会の残り物は大よそ3日分利用できますから、だいたい5000円相当の価値はあるわけで、そのぐらいの努力はしてもいいかな、と思ってます。
B
はあ、なるほど。何というか、今まで話を聞いてて思ったんですけど、あなたの行動原理を「食え、残すな」と表現するのは不適切ですよね。基本的にあなたは周りの人間が飯を残してくれた方が都合がよさそうですし。
S
そうそう、そうなんですよ!だって他の人が残せば残すほど、私は多くの物を持って帰ることができるわけですからね。
B
じゃあ新しい標語は「残せ、俺が食う」でいかがでしょうか。
S
すばらしい!座右の銘にさせていただきましょう。
(登場人物)
B=バカボコ S=スメルチン
B
さて、今回は残り物に対する姿勢についてですが、「食え、残すな」という題名が「祈り、働け」を意識したものですから、禁欲や清貧が関係しているのかと思ったのですが、どう考えても別物ですよね。むしろ貧乏性なだけの気がしますが…
S
貧乏性というか無駄が嫌いなんだと思います。だって美味いものにはお金をかけて当然だと思ってますし。また、コンビニよりスーパーが好きとか、ゲームや本も基本的に中古で買うあたりもその一環ではないでしょうか。これは、「同じものなら安く済むほうを選択する」という意味で無駄を嫌うと言えます。
B
それにしても、飯屋で他人の残したものを食べたり会社のバイキングの残り物を袋に入れて持って帰るなんて…プライドが傷つかないんですか?正直私なら恥ずかしいんですけど。
S
恥ずかしい行為だとみなさんが認識しているのはわかってますし、自分の行為が胸を張れるものだとも思ってませんよ。まあ一つは、自分のお腹が減っているのに目の前の飯が処理されていくのがムカつくという生理的なものでしょうね。そしてもう一つは、それがあれば明日以降の飯代が浮くのに、むざむざ捨てられていくのが我慢がならないという経済的な感覚です。要するに、私の場合はその二つが他者の認識に優先する、ということですよ。
B
へぇ。そういえば、自販機に毒物の入った缶ジュースが仕込まれて…なんて事件がありましたけど、あなたの場合もそれで殺せるって寸法ですね?
S
道端に落ちているものや置いてあるものを食ったり飲んだりしようとは思いませんよ。その代わりというか、自分や相手が目の前で落としたものなら普通に食べれますし、相手の食べ残しなども平気で食べれますね。
B
病気の危険とかって考えないんですか?
S
ああ、同じようなことを何度か聞かれましたよ。まあゼロじゃないですけど、その疑問に関しては別の点に興味がありまして。例えばあなたは、滅菌してたら私のように残りもの食べます?
B
いや、食べないと思います。
S
ですよね。これに関しては、「そこまでして残り物を食べたいと思わない」という部分が一番大きいでしょう。食器などの例にもあるように、他人のものに触れたり使用することに対する生理的嫌悪感、高取正男言うところの「清潔ではなく潔癖」の感覚が働いてるのではないかと思います。彼らはあたかも科学的理由で危険であるかのように言うのですが、実際には彼らの疑問の根源は生理的なものにあって、それに気付いてないか隠蔽しているのと考えています。
B
う~ん、ちょっと大げさに考え過ぎな気もしますけど…それはさておき、「食え、残すな」という命令形からすると、あなたは他の人に対してもものを残すべきではないと考えているのですか?例えば「世界では飢えている人がたくさんいるのに食べ物を残すのはけしからん」といったような。
S
そういう考えはないですね。それってだいたいは単に子供をしつけるためのレトリックじゃないですか。つまりは問題のすり替えですよ。だからもし自分がそう言われたら、“Very well! By all means let them have it!”とか言い返してやりますね。
B
そうすると「食え、残すな」というのは、あなた個人の行動原理なんですね。
S
そう言えると思います。だから大げさな話ですが、ボランティアなどへの発展性はないですね。
B
そうすると、やはり単に意地汚いだけじゃないですか?
S
そういう感覚はわかりますよ。ってどう説明したらいいのかな……たとえば、余所の食事に招かれたとしますよね。そこでの余りものを自分から持ち帰ろうとする人がいれば、間違いなく私は引きます。なぜって、それは「他人の所有物」ですし、また残り物はたいてい次のご飯などに再利用されるからです。一方で、すでに運ばれてしまったレストランの食事はすでに彼らのものではありませんし、また再利用もないのですから、別に私が処理しても問題ないでしょ?いつでもやるわけではないんです。
B
しかしレストランとは言っても、例えば会社のバイキングとかだったら場の雰囲気というか周りの目ってのもあるでしょ?そういうのは気にしないんですか?
S
ああ、そういうのですか。何か適当なことを言って誤魔化しておけばいいんですよ。例えば私が実際に言ったことがあるのは、
「そんな大量に飯を持って帰るの?」
「いやあ家に大食いのペットがいまして」(いかにも言い訳っぽく)
「へえ、ペット飼ってるんだ」
「ええ、ここに」(と言って自分の腹を指す)
まあこんな具合でアホな話をして煙に巻いておけば無問題(笑)それによって「おもしろい」と思わせれれば、何か話が出ても「あれはあれでおもしろいからOK」という事になるという寸法です。要は、周りが不快にならないよう一工夫してやればいいわけですよ。飲み会の残り物は大よそ3日分利用できますから、だいたい5000円相当の価値はあるわけで、そのぐらいの努力はしてもいいかな、と思ってます。
B
はあ、なるほど。何というか、今まで話を聞いてて思ったんですけど、あなたの行動原理を「食え、残すな」と表現するのは不適切ですよね。基本的にあなたは周りの人間が飯を残してくれた方が都合がよさそうですし。
S
そうそう、そうなんですよ!だって他の人が残せば残すほど、私は多くの物を持って帰ることができるわけですからね。
B
じゃあ新しい標語は「残せ、俺が食う」でいかがでしょうか。
S
すばらしい!座右の銘にさせていただきましょう。
僕は潔癖と節操の2つの要因により、他人が手をつけた食べ物を食べることができません。
ただ、自分が手をつけたものは何が何でも全部食べます。
それがマナーなのです…
とか思ってましたが、病気してから美味しくて気に入ったものしか食べなくなりました。
松屋のビビン丼は僕もアリだと思う。
それがあるべき姿だよ。俺も食いたくなるものだからこそ残り物を持ち帰るのであって、そうでないものは放置するし。
まあそれでも自分の手元のものは処理するけどね。