ひぐらし祭囃し~鷹野の神観念に関して~

2008-11-23 17:14:51 | ひぐらし
やっとカケラ紡ぎが終了。覚書が大量に増えて驚いているが、まだそれを書く段階ではないと思う。そこでまず、「ひぐらし祭囃し~特に「神」に関して~」の続きを書いておくことにしたい。


さて前回は、不条理な運命に苦しむ人間と神観念について話し、鷹野が「神=善」という前提に縛られていると述べた。ところが、あの後プレイしていたら鷹野が神の否定ではなく「神≠善」という認識にいたったことが描かれていたので、引用して誤解を解いておこうと思う(ついでに言っておくが、私は神が善であるとも悪であるとも断じていない)。なお、以下は全て鷹野のモノローグという形式で描かれている。

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もし。祖父が心臓の病気にかかり、研究を続けられなくなるようなことがあったなら。私は迷うことなくこの胸を裂き、祖父に私の心臓を差し出すだろう。肺の病気なら、肺を差し出す。内臓の病気なら内臓を差し出す。…それは狂気染みたことでもなんでもない。とても当たり前なこと。
だって、…祖父が私を探し出してくれるのが、あと一日も遅かったなら。私は生きていなかったかもしれない。…あるいは生きていても、人の形をしたいないか、…生きていても、人の心を失っているかのいずれかだった。
つまりそれは、祖父が来てくれたから生きられるということ。…祖父が私を生かそうと駆けつけてくれなかったら、…私は生きていられなかったということ。だから、私はこの生を祖父に捧げることに何の抵抗もない。むしろ、…私の命を捧げることで、祖父の命の一部となれるなら、それは本望なのだから。
永遠に一緒にいたくても、…人の存在は永遠じゃない。しかもそれは、私の両親が突然の事故で死んでしまったように、…あまりに儚く、しかもある日、突然、何の予告もなく終わってしまうのだ。
(中略)
だから、…祖父の命の一部になりたいと心の底から願った。そうすれば、…どんな不幸も鉄道事故も、私と祖父を永遠に引き裂くことなどできないのだから。
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以上の部分には鷹野の情念がよく表れている。そして、一二三の論文が否定された後次のように言う。

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…でも私は知っている。
神は人の運命を気まぐれに弄ぶだけで、決して好意で救ったりはしない。今日までこれだけ慎ましやかに努力を重ねてきた祖父にこの運命を与え、…何の罪もなかった幼かった私にあのような無残な運命を強いたのだ。
(中略)
確かに神はいる。祖父が信じる存在は実在する。でもそいつらには慈悲など何もない。理不尽な運命を気まぐれに与え、それを試練だと呼ばせ一方的に与え続けるだけ。そんな残酷な現実を、もちろん祖父に言えるわけもない。
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鷹野の連想する神は多神教らしい、とかいうどーでもいい突っ込みは置いておき…このようにして、鷹野は不条理な運命から、神の不在ではなく「神≠善」という観念を持つにいたったというわけだ。まあ宗教の合理性(不条理を納得するためのロジック、偶然だらけの世界に生きる指針を…)という観点から言えば、そんな気まぐれなだけの神の存在を信じてどないすんねんちゅー話になるわけだが…それは次を見ればわかる。

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私は神などに委ねない。全ての結果は私が紡ぎだす!
私の強固な意志が、神にさえ介在できない絶対の未来を作り出す!
それは、祖父が教えてくれた神になる方法とは違う。
それは、生きながらにして神に至る方法
(中略)
し。私は神の域を超えるのだ。神の気まぐれなどに負けない存在に!
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こうして、鷹野は鉄の意志を持つようになったわけである。まあ結局は、政局の変化に翻弄されて終わるのだが…それはまた別の機会に。

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