「神隠し」のコスモロジー

2022-07-05 11:32:32 | 歴史系

 

今日でさえ、人が忽然と姿を消す「神隠し」は時折見られる。まして監視カメラはもちろん電気もない世界でそれが日常的に見られたことは驚くに値しない。

 

ところで、このような怪異が何がしかを象徴しているという話に違和感を持つ人はそれほど多くないだろう。動画では「口減らし」や「人さらい」のことが言及されているが、前者は忌み子や鬼子の殺害という意味では以前紹介した「四ツ目神」のようなゲームになっているし、後者はハーメルンの笛吹きとそれが象徴するもの(疫病や徴兵?)の様々な考察はよく知られている。

 

つまり、「それはどのような世界理解を反映しているのか」という視点で考えるなら、当時の人々のメンタリティやコスモロジーを理解する上でも有益なのである。それは以前紹介した「キツネに騙されていた日本人」「天国と地獄」という設定などにも繋がるだろう。

 

・・・え、現代人にはそれほど縁のない話だって?私はそうは思わない。例えば都市伝説とその流行を見るといい。あるいは怪異を除いたとしても、陰謀論オルタナティブファクトサイバーカスケードetcetc...と認知の歪みは数え上げればキリがない。それはもちろん「物自体」が存在しない(誰しもが合意可能なトータルな世界観はない)ということもあるが、少なくとも啓蒙主義がかつて期待したように、不可知の世界への信仰を消し去っていけば、人は理性に基づいて世界を正しく理解するようになるというのは浅はかな望みであって、その先に待っていたのは、結局「自分の見たいものしか見ない」という人間の本姓だった、というわけだ。

 

まあだからこそ、その必謬性(限界)を踏まえた上でどう微調整をしながら(し合いながら)共生していくのか、て話になるんですがね。


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