森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

アカヤシオ

2016年07月01日 | 自然観察日記
今日から7月。もう夏ですが、まだ物語山の話が続きます。それも5月の話ですから二月も前のことでいささか気おくれがするのですが、それくらい話したい素材が物語山にはころがっているということなのです。物語山という特定の場所というより、三国山脈を隔てて新潟と群馬、日本海側と太平洋側の植生がいかに違うのかをお伝えしたいという思いがありますから今しばらくの間続けていきます。共通する種はある程度割愛し、葉だけのもものもできるだけ省くことにします。
今日はアカヤシオです。そもそも物語山に行こうとした最初の動機はアカヤシオが見たいというものでした。比較的低山にアカヤシオがあり四月下旬から五月に綺麗な花が咲くという情報を得て、足をねん挫していたにもかかわらず私の休日に車で駆け付けた次第です。予想に反して、登山後半が急傾斜地で登りはそれでも良いのですが、下りは足をかばってのものでしたから人には言えない苦労もありました。

大株のアカヤシオの株元

2016年07月01日 | 自然観察日記
何とかたどり着いた尾根筋には確かにアカヤシオがありました。しかし、花の色はかなり褪せてミツバツツジが満開でこれにとって代わっていました。あいにくの曇天で色あせ気味のアカヤシオは背景に同化して離れていると花があるのかないのかはっきりしません。暗部から山頂まで数百ⅿの範囲はかなりの岩場で特に下仁田市側がアカヤシオが好んで生育するような崖になっていてそれなりの個体数があるようですが、しっかりした確認ができません。ところどころにこのような大株の樹がありおそらく満開の頃は見事な景観ができていたのだろうと推測できます。

登山道に落ちていたアカヤシオの花

2016年07月01日 | 自然観察日記
散った花が登山道にいくつも落ちています。形はしっかりしていても色あせてしまっています。咲きだしの色は見事なピンク色。青い空に盛期のアカヤシオをこんな山に登って見たなら一生忘れないシーンになってしまうはずです。残念ながら今回は望みは叶えませんでしたが次回に期待したいと思います。

アカヤシオの花を望遠で撮影しました

2016年07月01日 | 自然観察日記
いくら樹に咲いているとはいえ盛期の花ではありません。かなり色あせています。
アカヤシオについては語らずにはおれない私の若いころの思い出があります。
静岡県浜松市から奥に入った天竜川の支流に当時春野町という町があり、このさらに奥に平家の落人が暮らす京丸という集落がありました。険しい山腹に家がありここに住人もいてまさに秘境。京丸集落(3軒あった)から反対の山(竜馬岳)をみると60年に一度赤と白の「京丸ボタン」が咲くという伝説があり、この正体を調べようという調査隊が組まれて私も同行したことがあるのです。当時大学2年。思えば植物の世界にどっぷりつかってしまったきっかけの山行だったと思います。
実際は、竜馬岳には直径30cm樹高十ⅿ弱はあろうかというシロヤシオとアカヤシオが素晴らしい群落を作っていたのですが、これを当時の営林署がカラマツを植林するために伐採をしようとしていたのです。これを辞めさせようと大学の先生方ときちんとした調査を行うというのが正規の目的でした。これに京丸伝説を絡めて世論を呼び起こそうとマスコミも協力してくれたという事情があり新聞にも掲載され、結局営林署の計画を変更させることができたのです。私の役どころはほとんど雑役部隊で三泊四日の苦行難行でクマ騒動などもあり変化にとんだものでした。キョウマルシャクナゲも出てきて当時の浅い知識では何が何だかよくわからなかったのですが、花の美しさに圧倒されていたことは確かです。シロヤシオの清楚さとアカヤシオの華やかさは今でも忘れられない一コマです。