もともとコマクサの群生があった場所のようですが、戦後著しい盗掘に見舞われ、見かねた地元の有志が盗掘されながらも苗を作り植栽を長年継続していまに至っていると聞きました。広大な面積に大規模なコマクサの群落が作られていますから、当時の努力は並大抵のものではなかったと思います。雄大な景観を背景に一面に生育するコマクサの群落を見れば誰もが圧倒されることでしょう。傾斜の緩い山道をゆっくり歩きながらコマクサの花を愛でて堪能した次第です。
高山のガレ場では何回となくコマクサを見てきました。かなり規模の大きな群落もあれば小規模な場所もありました。その中では、本白根山は最大の規模を誇るのではと思います。大株もあり花数が多く独特の形状をしている花が印象的です。
本白根山のコマクサは「色がとてもいい」という評判です。たしかに、赤い色彩が強い個体で占められています。他の産地ではもっと薄いぼんやりとした桃色の個体が多いのですが、ここはどれも赤紫色のはっきりした個体です。そういえば、この群落は人的に作られた群落というはなしです。自生していたものもあるのでしょうが、意識しなくても「きれいな」個体を選抜して育種し植栽をしたという可能性が大きいように思いました。このあでやかな大群落は自然に形成されたものではなく人為的なものとみると納得もいきますが、少々興ざめもします。