学生時代の夏休み、
私は佐世保の映画館でバイトをしていた。
あれは、そう、1975年の夏のことだ。
なぜ年号まで記憶しているかというと、
私がバイトしていたときに上映していた映画が、
『タワーリング・インフェルノ』であったからだ。
サンフランシスコの138階建の超高層ビルが火災になるというパニック映画で、
スティーブ・マックイーンとポール・ニューマンが共演した話題作だった。
他に、ウィリアム・ホールデン、フェイ・ダナウェイ、フレッド・アステアが出ていたし、
『終着駅』(1954年)や『慕情』(1955年)で有名なジェニファー・ジョーンズ(1919~2009年)も出ていた。
リアルタイムでは彼女の映画は見ていないが、
後年、『終着駅』や『慕情』を見て、
すっかりジェニファー・ジョーンズのファンになっていた私は、
この『タワーリング・インフェルノ』でまた彼女を見ることができて、
とても嬉しかったのを憶えている。
『タワーリング・インフェルノ』が日本で公開されたのが、
1975年6月28日。
大ヒットしていたこの映画は、夏休みに入ってもロングランを続けていたのだ。
映画館でバイトしていた1975年の夏、
私はいろいろな経験をした。
あの“ひと夏”のことは、私の胸に内に、今でも美しい思い出として残っている。
なぜ、いきなり、
「夏休みに映画館でバイトをしていた昔話」をしているかといえば、
本日紹介するこの『シグナル~月曜日のルカ~』という映画の舞台が、
地方のある映画館であるからだ。
夏休みに映画館でバイトしていた青年の、
ひと夏の恋の物語であるからだ。
夏休みに地元に帰省した大学生の宮瀬恵介(西島隆弘)は、
夏休みの期間を利用して、古い映画館「銀映館」でアルバイトをすることにした。
そこで出逢ったのが、ミステリアスな映写技師の杉本ルカ(三根梓)だった。
支配人の南川(井上順)から、
高額なバイトの採用条件として提示されたのは、
①ルカの過去を聞いてはいけない。
②月曜日にルカは憂鬱になるのでそっとしておく。
③ルカとの恋愛は禁止。
という、「不思議な3つの約束」だった。
ルカはこの3年間映画館に住み、
こもりきりであるという。
無愛想なルカにどう接したらいいのかわからない恵介であったが、
一緒に仕事をしていくうちに、次第に彼女に惹かれていく。
ある日、恵介は、仕事の帰りに、
見知らぬ男・レイジ(高良健吾)から「銀映館」について聞かれる。
さりげなくルカの消息を探っている風の男に警戒心を抱いた恵介は、
レイジを適当にあしらう。
レイジという男は何者なのか?
ルカの過去に何があったのか?
恵介は、調べていくうちに、切なくも哀しいルカの過去を知ることになる……
ヒロイン杉本ルカを演じるのは、
映画デビューにして、初主演となる、三根梓。
なんと、佐賀県嬉野市出身の新人女優なのだ。
1991年12月21日生まれ。佐賀県嬉野市出身。
中学時代から福岡市のモデル事務所に所属し、
高校卒業と同時に上京。
映画『シグナル~月曜日のルカ~』で主役に抜擢され、注目を集める。
映画公開日と同じ6月9日には、ファースト写真集『三根梓』を発売。
この他、
幻冬舎文庫の年間イメージキャラクターや、
(「文学少女じゃ いけない?」……素敵なコピーだ)
ケンタッキーフライドチキンのCM、
ダイキンのCMにも出ている。
中学、高校と、バレーボール部に所属。
中学の時は、レフトアタッカーで、県大会で優勝。
高校は進学校であったが、
バレー部、モデルの仕事、そして勉強も頑張り、
見事、現役で、早稲田大学政経学部に合格。(現在3年)
才色兼備の期待の大型新人なのだ。
初々しい演技は、見ていて心地よかった。
既存の女優ではなく、監督がなぜ彼女を主役に据えたのかが、
映画を見終わって、なんとなく解る気がした。
彼女の醸し出す知性、品性、それに清潔感、
そして、新人女優の一所懸命な必死さが必要だったのだ。
監督のその期待に見事に応えた演技だったと思う。
「ダイアモンドの瞳」と称される彼女の目の輝き、美しさは、ホンモノであった。
だからこそ、多くのマスメディアが彼女に注目しているのだろう。
これからの活躍が本当に楽しみだ。
宮瀬恵介役の西島隆弘。
1986年9月30日生まれ。北海道札幌市出身。
歌手、俳優、ダンサー。
2005年に結成された男女7人のパフォーマンスグループAAA(トリプル・エー)のメンバーとして人気を集める。
同年、日本レコード大賞最優秀新人賞を受賞。
俳優としてもドラマ、映画、舞台と幅広く活躍しており、
2009年に『愛のむきだし』(園子温)で映画初出演ながら初主演を果たし、
キネマ旬報新人男優賞、毎日映画コンクール新人賞などを受賞、高い評価を得る。
現在、NHK大河ドラマ『平清盛』では平清盛の弟・頼盛役を演じている。
映画館でバイトをはじめ、次第にルカに思いを寄せていく大学生の役を、とても巧く演じていた。
家庭の幸せに恵まれているとは言えず、幼い頃、父親が暴れると、弟と一緒に映画館で過ごしていたという過去を持つ。
暗い過去をもつルカに、いつも笑顔と優しい言葉で接する恵介は、
この作品での唯一の救いでもあった。
難しい役であるのだが、西島隆弘は、そうとは気づかれないように、さりげなく演じていた。
新人女優・三根梓も、彼に助けられた部分が大きかったことと思う。
レイジ役の高良健吾。
1987年11月12日生まれ。熊本県熊本市出身。
『ハリヨの夏』(2006年)で映画初出演。
『M』(2006年)で第19回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門特別賞受賞。
以降、『蛇にピアス』(2008年)など様々なキャラクターを好演。
『ソラニン』(2010年)、『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』(2010年)、『おにいちゃんのハナビ』(2010年)で第23回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎新人賞を受賞。
『白夜行』(2011年)、『軽蔑』(2011年)など話題作に次々と出演。
また、NHK連続テレビ小説「おひさま」にヒロインの夫・和成役で出演し、
第36回エランドール賞新人賞・テレビガイド賞を受賞。
今後公開される作品として、
『苦役列車』(2012年)、『千年の愉楽』(2012年)、『横道世之介』(2013年)などがある。
とにかく、現在、もっともノッている若手男優である。
『白夜行』も『軽蔑』(レビューを書けなくてゴメン)も見ているが、
どちらも演技力抜群。
とにかく目ぢからがハンパなくスゴイ。
この作品でも、ルカの過去にまつわる男として、圧倒的な存在感を示している。
出身が同じ九州(佐賀県と熊本県)ということで、
九州の話などして、随分と三根梓をリラックスさせてくれたらしい。
恐いイメージがあるが、「優しい人」だと、三根梓がどこかでバラしていた。
監督は、谷口正晃。
主演に仲里依紗を迎えた『時をかける少女』(2010年)で劇場用長編映画の監督としてデビュー。
同作では第32回ヨコハマ映画祭で新人監督賞を受賞したほか、
上海国際映画祭やプチョン国際ファンタスティック映画祭に招待されるなど、
海外での高い評価も得た。
2011年には、桐谷美玲がW主演した『乱反射』『スノーフレーク』を手がけ、
若手女優たちの初々しい魅力をひきだす仕事が続いている。
『時をかける少女』は、ラストの大写しになる仲里依紗の顔とともに、
とても印象に残る佳作であったが、
本作もまた、ラストに三根梓の顔をクローズアップし、
ヒロインの笑顔が印象深い作品になっている。
青春恋愛ミステリーであるが、後味の良い作品に仕上がっている。
新潟県上越市と長野県上田市とでロケされた作品であるが、
風景描写がとても良く、
地方都市の持つ穏やかな空気感といういうものがよく表現されていた。
こういう地方都市で撮られた作品が大好きな私は、
この『シグナル~月曜日のルカ~』も忘れがたい作品となった。
地方の古い名作座を舞台にした映画であるので、
邦画の数々の名作が、スクリーンに、ポスターにと、現れては消える。
これが映画ファンにはたまらなく嬉しい。
このことだけでもこの作品を見る価値は十分にある。
映画ファンは、ぜひぜひ……
佐賀県嬉野市出身の三根梓の映画デビューにして初主演作という本作を、
私はいつまでも憶えていようと思う。
まだ20歳の彼女は、これから多くの作品に出るだろう。
たくさんの楽しみを与えてくれるだろう。
……老後が楽しみになってきたぞ~
私は佐世保の映画館でバイトをしていた。
あれは、そう、1975年の夏のことだ。
なぜ年号まで記憶しているかというと、
私がバイトしていたときに上映していた映画が、
『タワーリング・インフェルノ』であったからだ。
サンフランシスコの138階建の超高層ビルが火災になるというパニック映画で、
スティーブ・マックイーンとポール・ニューマンが共演した話題作だった。
他に、ウィリアム・ホールデン、フェイ・ダナウェイ、フレッド・アステアが出ていたし、
『終着駅』(1954年)や『慕情』(1955年)で有名なジェニファー・ジョーンズ(1919~2009年)も出ていた。
リアルタイムでは彼女の映画は見ていないが、
後年、『終着駅』や『慕情』を見て、
すっかりジェニファー・ジョーンズのファンになっていた私は、
この『タワーリング・インフェルノ』でまた彼女を見ることができて、
とても嬉しかったのを憶えている。
『タワーリング・インフェルノ』が日本で公開されたのが、
1975年6月28日。
大ヒットしていたこの映画は、夏休みに入ってもロングランを続けていたのだ。
映画館でバイトしていた1975年の夏、
私はいろいろな経験をした。
あの“ひと夏”のことは、私の胸に内に、今でも美しい思い出として残っている。
なぜ、いきなり、
「夏休みに映画館でバイトをしていた昔話」をしているかといえば、
本日紹介するこの『シグナル~月曜日のルカ~』という映画の舞台が、
地方のある映画館であるからだ。
夏休みに映画館でバイトしていた青年の、
ひと夏の恋の物語であるからだ。
夏休みに地元に帰省した大学生の宮瀬恵介(西島隆弘)は、
夏休みの期間を利用して、古い映画館「銀映館」でアルバイトをすることにした。
そこで出逢ったのが、ミステリアスな映写技師の杉本ルカ(三根梓)だった。
支配人の南川(井上順)から、
高額なバイトの採用条件として提示されたのは、
①ルカの過去を聞いてはいけない。
②月曜日にルカは憂鬱になるのでそっとしておく。
③ルカとの恋愛は禁止。
という、「不思議な3つの約束」だった。
ルカはこの3年間映画館に住み、
こもりきりであるという。
無愛想なルカにどう接したらいいのかわからない恵介であったが、
一緒に仕事をしていくうちに、次第に彼女に惹かれていく。
ある日、恵介は、仕事の帰りに、
見知らぬ男・レイジ(高良健吾)から「銀映館」について聞かれる。
さりげなくルカの消息を探っている風の男に警戒心を抱いた恵介は、
レイジを適当にあしらう。
レイジという男は何者なのか?
ルカの過去に何があったのか?
恵介は、調べていくうちに、切なくも哀しいルカの過去を知ることになる……
ヒロイン杉本ルカを演じるのは、
映画デビューにして、初主演となる、三根梓。
なんと、佐賀県嬉野市出身の新人女優なのだ。
1991年12月21日生まれ。佐賀県嬉野市出身。
中学時代から福岡市のモデル事務所に所属し、
高校卒業と同時に上京。
映画『シグナル~月曜日のルカ~』で主役に抜擢され、注目を集める。
映画公開日と同じ6月9日には、ファースト写真集『三根梓』を発売。
この他、
幻冬舎文庫の年間イメージキャラクターや、
(「文学少女じゃ いけない?」……素敵なコピーだ)
ケンタッキーフライドチキンのCM、
ダイキンのCMにも出ている。
中学、高校と、バレーボール部に所属。
中学の時は、レフトアタッカーで、県大会で優勝。
高校は進学校であったが、
バレー部、モデルの仕事、そして勉強も頑張り、
見事、現役で、早稲田大学政経学部に合格。(現在3年)
才色兼備の期待の大型新人なのだ。
初々しい演技は、見ていて心地よかった。
既存の女優ではなく、監督がなぜ彼女を主役に据えたのかが、
映画を見終わって、なんとなく解る気がした。
彼女の醸し出す知性、品性、それに清潔感、
そして、新人女優の一所懸命な必死さが必要だったのだ。
監督のその期待に見事に応えた演技だったと思う。
「ダイアモンドの瞳」と称される彼女の目の輝き、美しさは、ホンモノであった。
だからこそ、多くのマスメディアが彼女に注目しているのだろう。
これからの活躍が本当に楽しみだ。
宮瀬恵介役の西島隆弘。
1986年9月30日生まれ。北海道札幌市出身。
歌手、俳優、ダンサー。
2005年に結成された男女7人のパフォーマンスグループAAA(トリプル・エー)のメンバーとして人気を集める。
同年、日本レコード大賞最優秀新人賞を受賞。
俳優としてもドラマ、映画、舞台と幅広く活躍しており、
2009年に『愛のむきだし』(園子温)で映画初出演ながら初主演を果たし、
キネマ旬報新人男優賞、毎日映画コンクール新人賞などを受賞、高い評価を得る。
現在、NHK大河ドラマ『平清盛』では平清盛の弟・頼盛役を演じている。
映画館でバイトをはじめ、次第にルカに思いを寄せていく大学生の役を、とても巧く演じていた。
家庭の幸せに恵まれているとは言えず、幼い頃、父親が暴れると、弟と一緒に映画館で過ごしていたという過去を持つ。
暗い過去をもつルカに、いつも笑顔と優しい言葉で接する恵介は、
この作品での唯一の救いでもあった。
難しい役であるのだが、西島隆弘は、そうとは気づかれないように、さりげなく演じていた。
新人女優・三根梓も、彼に助けられた部分が大きかったことと思う。
レイジ役の高良健吾。
1987年11月12日生まれ。熊本県熊本市出身。
『ハリヨの夏』(2006年)で映画初出演。
『M』(2006年)で第19回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門特別賞受賞。
以降、『蛇にピアス』(2008年)など様々なキャラクターを好演。
『ソラニン』(2010年)、『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』(2010年)、『おにいちゃんのハナビ』(2010年)で第23回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎新人賞を受賞。
『白夜行』(2011年)、『軽蔑』(2011年)など話題作に次々と出演。
また、NHK連続テレビ小説「おひさま」にヒロインの夫・和成役で出演し、
第36回エランドール賞新人賞・テレビガイド賞を受賞。
今後公開される作品として、
『苦役列車』(2012年)、『千年の愉楽』(2012年)、『横道世之介』(2013年)などがある。
とにかく、現在、もっともノッている若手男優である。
『白夜行』も『軽蔑』(レビューを書けなくてゴメン)も見ているが、
どちらも演技力抜群。
とにかく目ぢからがハンパなくスゴイ。
この作品でも、ルカの過去にまつわる男として、圧倒的な存在感を示している。
出身が同じ九州(佐賀県と熊本県)ということで、
九州の話などして、随分と三根梓をリラックスさせてくれたらしい。
恐いイメージがあるが、「優しい人」だと、三根梓がどこかでバラしていた。
監督は、谷口正晃。
主演に仲里依紗を迎えた『時をかける少女』(2010年)で劇場用長編映画の監督としてデビュー。
同作では第32回ヨコハマ映画祭で新人監督賞を受賞したほか、
上海国際映画祭やプチョン国際ファンタスティック映画祭に招待されるなど、
海外での高い評価も得た。
2011年には、桐谷美玲がW主演した『乱反射』『スノーフレーク』を手がけ、
若手女優たちの初々しい魅力をひきだす仕事が続いている。
『時をかける少女』は、ラストの大写しになる仲里依紗の顔とともに、
とても印象に残る佳作であったが、
本作もまた、ラストに三根梓の顔をクローズアップし、
ヒロインの笑顔が印象深い作品になっている。
青春恋愛ミステリーであるが、後味の良い作品に仕上がっている。
新潟県上越市と長野県上田市とでロケされた作品であるが、
風景描写がとても良く、
地方都市の持つ穏やかな空気感といういうものがよく表現されていた。
こういう地方都市で撮られた作品が大好きな私は、
この『シグナル~月曜日のルカ~』も忘れがたい作品となった。
地方の古い名作座を舞台にした映画であるので、
邦画の数々の名作が、スクリーンに、ポスターにと、現れては消える。
これが映画ファンにはたまらなく嬉しい。
このことだけでもこの作品を見る価値は十分にある。
映画ファンは、ぜひぜひ……
佐賀県嬉野市出身の三根梓の映画デビューにして初主演作という本作を、
私はいつまでも憶えていようと思う。
まだ20歳の彼女は、これから多くの作品に出るだろう。
たくさんの楽しみを与えてくれるだろう。
……老後が楽しみになってきたぞ~