原題:『Asman Aldynda』 英題:『Under Heaven』
監督:ダルミラ・チレプベルゲノワ
脚本:ダルミラ・チレプベルゲノワ
撮影:アクジョル・ベクボロトフ
出演:アンワル・オスモナリエフ/ヌルジキト・カナエフ/タアライカン・アバゾア
2015年/キルギス
(SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016)
「お地蔵さん」を彫る意義について
「カインとアベル」という聖書の物語の現代版として中央アジアのキルギスの石切り場を舞台としている本作において、私の関心は反抗的な兄のケリムと思慮深い弟のアマンの関係ではなく、この兄弟に翻弄される少女のサルタナットの方にある。
ケリムからプレゼントされた赤いハイヒールを履いてサルタナットは2人に黙って村を後にしてしまうのであるが、これは『オズの魔法使(The Wizard of Oz)』(ヴィクター・フレミング監督 1939年)の主人公のドロシー・ゲイルを彷彿とさせる。逆に言うならばサルタナットに愛想を尽かされたケリムとアマンは、案山子やブリキ男やライオンのようにドロシーと共に旅に連れて行ってもらえなかったのであり、サルタナットが「Over The Rainbow(虹を超えて)」より良い場所を目指している間に、ケリムとアマンは「Under Heaven(天国の下)」で地獄を見るのである。