澎湖島のニガウリ日誌

Nigauri Diary in Penghoo Islands 澎湖島のニガウリを育て、その成長過程を記録します。

映画「慕情」原作者、ハン・スーインの生涯

2012年11月05日 10時30分10秒 | 音楽・映画
 今朝の新聞各紙にハン・スーイン女史の死去が伝えられた。

 ハン・スーイン(韓素英あるいは韓素音)は、映画「慕情」(Love is a many splendored thing)の原作者。1955年制作の映画「慕情」は、英国領香港を舞台にして朝鮮戦争で引き裂かれた米国人記者(ウィリアム・ホールデン)と香港人女医(ジェニファー・ジョーンズ)の恋を描く作品だった。その主題歌は、アカデミー賞音楽賞を受賞した。



 このジェニファー・ジョーンズが演ずる女医が、実はハン・スーイン自身の分身。彼女自身も、映画と同様に中国人とベルギー人の混血で、しかも医師だった。
 「敗戦」から間もない時期だったので、日本ではただ純粋な恋愛映画として大ヒットしたが、今になってこの映画を見ると、「朝鮮戦争」を巡る米中の対立、すなわち冷戦のまっただ中でも、「中国」と米国は深い「絆」で結ばれているのだと暗示しているようにも思える。

 作家としてのハン・スーインは、文革のまっただ中の1970年中国を取材、「2001年の中国」(「二〇〇一年的中国」)というルポルタージュ本を出版した。2012年の今になって読むと、彼女の「予言」「ご託宣」はすべて大ハズレ、すべてが真逆の結果になったことが分かる。覇権を求めず、環境を守り、人々の真の幸福を追求する「人民中国」が実現するとご託宣したのだが、今や世界に覇権を唱えるモンスター的独裁国家が出現してしまった。

 彼女はまた、毛沢東の伝記も著した。これもまた、今にして思えば政治宣伝パンフレットのようなシロモノだった。
 「毛沢東中国」を礼賛した彼女だったが、文革が否定され、毛沢東神話がかげりを見せても、中国共産党の宣伝係としての役割を貫いた。

 「慕情」というメロドラマで見えた表の顔と、中国共産党のエージェントとしての裏の顔。複雑な両面性を持つ、いかにも「中国人」らしい人だった。 
 

映画「慕情」原作のハン・スーインさん死去 中国出身

 AFP通信などによると、ハン・スーインさん(中国出身の女性作家)が2日、スイス・ローザンヌの自宅で死去。95歳。

 中国・河南省生まれ。父は中国人、母はベルギー人。北京や欧州の大学で医学などを学び、香港などで活動。1955年に自伝的小説が米ハリウッドで映画化(邦題「慕情」)され、ヒットした。毛沢東や周恩来の伝記も手がけた。