李登輝氏が来日、衆院議員会館で講演を行った。一時重病説が伝えられたが、ここまで回復されたとは。喜ばしい限りだ。
以前、日比谷公会堂での講演会を聴いた私は、坂本龍馬の「船中八策」をたとえにして、日本の若者に奮起を促す李登輝氏に、日本の古き良き時代の「教養人」の典型を見た思いがした。
「ひとつの中国」は決して同意できない、という今回の李登輝氏の講演は、特に「中国が自由化、民主化されるような日は、半永久的に来ない」という認識が前提となっている。
中国に対する安易な親近感、日中友好談義は、もはや影をひそめた昨今だが、「中国市場」への誘惑、自虐史観に基づく中国への贖罪意識は、いまだ根強く残っている。李登輝氏の認識は、中国に幻想を持ち続ける日本人に警鐘を鳴らすとともに、中共(=中国共産党)と国民党(=中国国民党)がともに抱く「ひとつの中国」を改めて否定した。
李登輝氏と親交のある井尻秀憲・東京外国語大学教授(国際関係論)は、この10年以内に中共政権は崩壊し、中国は連邦制国家に移行していくと予測している。そのとき、台湾は連邦制国家に組み入れられる可能性があるという。
92歳になった李登輝氏がその日を見届けられることを願わずにはいられない。
李登輝氏の存在自体が、今や自虐史観に呪縛された日本人へのアンチテーゼ。
それにしても、日本のマスメディアの腑抜けぶりにはあきれ果てる。李登輝氏の訪日を報じたのは「産経新聞」のみ。他のメディアは、中国筋の目を憚って、すべて尻込みした。
中国メディアは、氏の来日を口を極めて罵っている。それは李登輝氏の発言が「中国問題」の核心を衝いているからにほかならない。
来日の李登輝氏「ひとつの中国、決して同意できない」 衆院議員会館で初講演
来日中の台湾の李登輝10+ 件元総統(92)は22日、東京都内の衆院第一議員会館で、国会議員有志らを前に台湾の民主化をテーマに講演した。総統退任後、李氏の訪日10+ 件は7回目だが、国会施設での講演はこれが初めて。
「台湾パラダイムの変遷」と題した日本語による講演で、李氏は戦後台湾を統治した中国国民党政権を「外来政権」だと指摘。同党の長期支配を受けたことで、「独立した台湾人」という意識が台湾に確立されたと語った。
李氏は、戒厳令解除から2000年の政権交代までを台湾の「第1次民主改革」として成果を強調する一方、現職の馬英九総統が進めた対中政策が批判を浴びたとして、総統権限の制限を含む新たな民主改革が必要だと述べた。
中国に関しては、在任中に制定した「国家統一綱領」を例に「中国が自由化、民主化されるような日は、半永久的に来ないと思っていた」と発言。「ひとつの中国」との原則について、「われわれは決して同意できない」と拒絶した。
講演に先立ち、下村博文文部科学相が超党派議員の発起人を代表してあいさつ。講演会には議員ら約300人が出席した。