澎湖島のニガウリ日誌

Nigauri Diary in Penghoo Islands 澎湖島のニガウリを育て、その成長過程を記録します。

NHKドラマ「太陽の子」と自虐の夏

2020年08月15日 11時48分03秒 | マスメディア

 「終戦記念日」の今日、TVではさまざまな「戦争回顧」番組が放送されるようだ。このブログを続けて十数年になるが、この時季の同種のTV番組が次第に変容する過程を眺めてきた。

 この間の特徴は、戦争体験の風化に伴って観念的平和論(戦争批判)が蔓延したことに尽きる。つまり、戦争体験者から「それは事実とは違う」とクレームが来る心配がなくなり、TV番組制作者は「平和」「人権」「民主」などのキーワードを駆使しつつ、ポリティカル・コレクトネス(政治的正当性)ばかりを気にした番組を作るようになった。その結果、「平和」「人権」は何よりも大事で、それに「寄り添う」ことばかり強調される、皮相的な番組ばかりになってしまった。

 今夜、NHKが放送するというドラマ「太陽の子」。これを期待している人も多いのだろうが、ちょっと水を差しておきたい。この番組は事実に基づいて「核の恐ろしさ」「戦争の悲惨さ」を伝えるものではなく、観念的な「平和論」の強要、あるいは視聴者へのお説教を一歩たりとも超えるものではない。

 無抵抗な一般国民に一方的に原子爆弾を投下した米国。一方、戦争末期の日本では、京都帝国大学物理学教室を中心に原爆開発が進められていたというのが、この「太陽の子」のストーリー。事実として、日本側も原爆開発に手を染めていただろうが、その研究者が良心の呵責にさいなまれるなどというストーリーには、「歴史の後知恵」的な欺瞞を感じる。当時の研究者は「国のため」「国策遂行のため」に真摯に研究を進めたはずで、その研究が「人類の平和」「人権」に抵触するなど夢にも思わなかったはずだ。というか、「人類の平和」などという観念は全くなく、同等の概念を挙げるとすれば「大東亜の解放」ではなかったのか?

 この「太陽の子」の目的は、歴史を現在の視点から描くとともに、米軍による原爆投下は戦争犯罪ではなく、「お互い様」なのだとするためだ。そこには、もし「大日本帝国」が先に原爆開発に成功していたら、同じことを米国に対してしていただろうという暗黙の含意がある。

 毎年、この季節になると繰り返される「戦争回顧番組」。それらは時を経るにつれて、リアリティが薄くなり、ご都合主義に陥ってしまった。こんなものを鵜呑みにして、空虚な平和主義にすがる人が増えれば増えるほど、それこそ隣国やそれに追従する勢力の思うつぼなのだと思えてくる。

 コロナ禍においても「自粛」が事実上「強制」となったこの国。空虚な戦争回顧と平和主義の主張には、またかと看過するだけでは済まされない危険性を感じる。 

 

 

三浦春馬さん出演 NHK「太陽の子」今夜放送「想像力を皆様に届ける仕事 戦争を考えるきっかけに」

スポニチアネックス - 8月15日(土) 10時30分

 

 

 戦争に翻弄された若者たちを描くNHKの国際共同制作・特集ドラマ「太陽の子 GIFT OF FIRE」は終戦の日の15日、午後7時半から総合テレビ・BS8K・BS4Kで同時放送される。俳優の柳楽優弥(30)、女優の有村架純(27)、7月18日に急逝した俳優の三浦春馬さん(享年30)らが出演。柳楽は核分裂のエネルギーによる新型爆弾の研究を進める科学者の卵、三浦さんはその弟、有村は兄弟の幼なじみを演じる。
 太平洋戦争末期、京都帝国大学の物理学研究室で原子の核分裂について研究している石村修(柳楽)は、海軍から命じられた核エネルギーを使った新型爆弾開発のための実験を続けていた。空襲の被害を防ぐための建物疎開で家を失った幼なじみ・朝倉世津(有村)が、修の家に居候することになる。そこに修の弟・裕之(三浦さん)が戦地から一時帰宅し、久しぶりの再会を喜ぶ。爆弾開発の実験がなかなか進まない中、研究室のメンバーは研究を続けることに疑問を持ち始める。そして、裕之が再び戦地へ行くことになった矢先、広島に原子爆弾が落とされたという知らせが届く。研究者たちは広島に向かい、焼け野原になった広島の姿を目撃するのだった…。
 番組公式サイトに発表されたコメントは以下の通り。
 ▼柳楽優弥 とても重大な事実をベースにしたストーリーということで、撮影が始まる前は正直とても怖かったです。その中で、演出の黒崎さんが勉強する機会を設けてくださったり、有村さんや春馬くん他、何度か共演させていただいたキャストの方々が多かったので、とても心強く感じました。スタッフ・キャストの皆さんと一緒になって、しっかり学びながら撮影に挑むことができました。
 ▼有村架純 完成した作品を見た時に、今だからこそ見ていただきたい作品だと強く思いました。新型コロナウイルスなどの影響で世界中が変わりつつある中、国同士、人間同士の混乱も生じており、改めて平和について考える時だと思います。構想から制作まで十数年と温められ、今このタイミングで「太陽の子」を見ていただけるのは奇跡だと思いますし、そこに参加することができて、とても光栄です。
 ▼三浦春馬さん 太平洋戦争を描いた作品は数多く存在しますが、「太陽の子」は当時を力強く生き抜いた科学者の視点を強く描いた作品であり、これまでとはまた違った側面・角度から見返すことができました。このドラマは戦争、そして平和という大きなテーマが掲げられていると思います。僕たちの仕事は想像力を皆様に届ける仕事ですし、この作品を通して皆さんが戦争というものを考える大きなきっかけになればと思っています。
 ▼黒崎博氏(作・演出)1冊の古い日記を手にしたことが、始まりでした。そこには科学に情熱を注ぎ、青春を燃焼させる若い研究者の日常が書かれていました。原子物理学という新しい学問へのじりじりするような憧れと、一方でそれを兵器に転用することへの疑問。その姿は知らない誰かではなく、私たちと同じように生き方を探し続ける等身大の若者として迫り、僕は心を揺さぶられました。どうしてもその青春の形を物語にしたくなり、シナリオを書きました。テーマに強く共鳴してくれた人々によって、この物語は作られました。海外からも大勢のスタッフが参加しています。国籍に関係なくたくさん議論し、考えました。柳楽優弥さんは日本海に飛び込み、比叡山を駆けずり回って演じてくれました。キャスト・スタッフと合宿しながら撮り進めた「格闘の記録」が1人でも多くの方に届くことを願っています。