やっぱりと思う「ニュース」が、昨日の「夕刊フジ」に掲載された。先日、NHKで放送された「無縁社会」というドキュメンタリー番組が、過剰演出であり、出演者から苦情が寄せられているという内容だ。(詳細は、下掲のとおり。)
「無縁社会」というフレーズを考えたのが、NHK内部の職員なのか、あるいは学者先生か厚生労働省関係者なのかは知らないが、なかなかセンセーショナルで現代日本社会の一面をえぐった鋭い言葉だと思う。だが、私はこの番組を見る気にはならなかった。その理由は至って単純。「ああ、また、深刻ぶったナレーション、こけおどしの効果音と音楽で視聴者をたぶらかすのだろうな」と思ったからだ。
NHKは、「アジアの”一等国”」(2009.4.5放送 「シリーズJapan」第一回)を放送した”前科”がある。この番組は、日本の台湾統治をことさら貶め、史実を歪めて、「台湾は中国の一部」「ひとつの中国」という中国共産党のイデオロギーに擦り寄る内容だった。「2万5千の台湾総督府文書を読み解いた」などと吹聴していたが、結局は親日的な台湾を「反日」中国に売り渡すことに協力するかのような番組だった。この番組のディレクター・濱崎憲一に対しては、番組にも登場した老台湾人医師・柯(か)徳三氏(当時87歳)から「あなたは中共から何かもらったのか?」という非難の言葉が飛び出した。この柯徳三氏は、台湾の日本語世代で、NHKのインタビューに応じて日本統治時代の思い出を語ったところ、それが番組の中で恣意的に使われたとしてNHKに抗議している。柯氏は、蒋介石独裁時代においてもNHKの番組をずっと愛聴、視聴してきたという。その柯氏は昨年亡くなっているので、最晩年におけるNHKのこの裏切りにはさぞかし口惜しかっただろう。
NHKのドキュメンタリー番組は、かつて民放では作れないと言われ定評があったが、「プロジェクトX」の成功以来、その制作手法が変わってきたと言われる。つまりそれは、視聴率UPを狙った民放風の番組制作だ。羊頭狗肉の番組宣伝、おどろおどろしいナレーションと音楽、そして一定の意図を持った番組内容…。今や「みのもんた」の朝番組といくつも共通点が見いだせるほどだ。
今回の「無縁社会」過剰演出は、NHKのドキュメンタリー番組に共通する問題だ。NHKだからと鵜呑みにしてはならないという、格好の警鐘となった。
NHK「無縁社会」で過剰演出 ネット軽視だ!出演者から苦情相次ぐ
夕刊フジ 2月17日(木)16時57分配信
《「ネット縁」に対して前向きに考えて出演を承諾したのに、「無縁だからネットに逃げ込んでいる」ような演出をされてしまった》NHKスペシャル「無縁社会~新たなつながりを求めて~」(11日放送)に出演した女性がこんな内容をあるサイトに寄せた。
女性はネットを通じた「縁」を前向きに伝えるために出演を承諾。もともと女性には家族も友人もいて、そもそも「無縁」ではなかった。だが、実際の放送で、女性は《父の看護で疲れ友人もおらず、現実逃避のためネット生放送を利用(中略)現実には人と触れ合いの少ない「無縁」な人》(女性が寄せたサイトから)にされ、非公開と伝えていた実年齢も明かされた。
夕刊フジの取材に対し、この女性は「誤解と間違いを訂正しただけで、サイトに記した以上の発言はありません。後は、10日から昨日にかけて、私のコミュニティにて番組に関しての感想や意見を発言していますし、NHKさんに対するフォローもしています」としている。
出演者の苦情はこの女性に止まらない。今月10日、NHKニュースウオッチ9の「無縁社会」特集に出演した北海道の加藤直樹さん(34)も不信感を募らせる。屋外でのネット生中継を行っている加藤さんは、NHKから受けた取材の過程で「ネットの繋がりはコミュニケーションの形態の一部。現実社会と変らない」「ネットの相手も人間で、現実社会と分けて接しているつもりはない」などと一貫して主張した。
だが、加藤さんによると、オンエアされた内容は「暗いトーンでの演出に終始しているように思います。内容も現実のイメージからはほど遠く、言葉遣いやナレーション、BGMなど、視聴者に与えるイメージはかなり作為的に感じました」。無縁をことさら強調されたという。
加藤さんとともに出演した中原将太さん(31)も「NHKはネットの世界でコミュニケーションを広げている人間をどうしても『現実世界に縁がなくネットに逃げている』と設定したかったのでしょう。実際、(自身の)ツイッター(に寄せられた意見)を見ると、多くの視聴者がわれわれ出演者を誤解してしまっている」と憤る。加藤さんの抗議後、出演した特集の記録動画は、ほどなくニュースウオッチ9のサイトから削除された。
こうした批判をNHKはどう受け取っているのか。「番組、特集の内容に問題はないと考えています。無縁社会の中でのネットを通じたつながりをテーマにしていることについては、事前に十分説明していると認識しています」(広報部)。問題はないとの見解を示しているが…。