「桜も日本一、錦帯橋も日本一のふるさとを持つ幸せ者が二人といるだろうか。私はふるさとにとても感謝している。人間をつくるのはふるさとである」
と言ってふるさとを懐かしんだ作家宇野千代。
ひとたび見込んだら、がむしゃらに行動せずにはいられなかった彼女が、岐阜県本巣郡の根尾村で、瀕死の「薄墨の桜」を再生させた話は、自らの小説にもあるし有名な話でもある。
その薄墨の桜を株分けして、岩国の生家に植えたことも地元では知られている。
今は完全に成長し、毎年見事な花をつけるに至った。
ことほど左様に、桜をこよなく愛したはずなのに、何故か宇野千代生家には100本とも言われるもみじの木が植えられている。いろはもみじが大半だが、山紅葉も混ざっているという。
そんなもみじを愛でる晩秋のお茶会が生家の庭で繰り広げられた。開場前からひっきりなしにお客さんが訪れる。年に一度、楽しみにしておられるのか和服の女性が目立つ。
「おくさま、おきれいですね。 そのお召し物が・・・」これは「きみまろさん」に任せよう。
交替制で毎年担当が変るお茶席の主。今年は裏千家淡交会のお点前を愉しんだ。
今日のお茶をたてる最も若い女性は高校一年生。小学校6年から始めて4年目という。
じいちゃんと孫の会話のような質問に、はにかみながら答えてくれる。実に初々しい。
朝早くからの準備や後始末など苦労もあるが、たくさんの仲間が陣中見舞いに訪れてくれると、お茶席に合わない笑い声を発しながらも、一服のお抹茶に舌鼓。
またひとつ、今年のメイン行事が終わった。ひと安堵。