高校に通う孫君のチャリンコ
孫3兄弟の次男君はいま高校3年生。目下受験に備えて奮闘中である。
家からおよそ10km離れた私立の高校へ、雨の日風の日、暑い日寒い日お構いなしで、自転車通学を頑張っている。
それもいままでのところ皆勤が続いているようで、勉学の方はともかく、元気で休まず怠らず、ひたすら登校しているところは褒めてやりたい。
高校入学するときにお祝いを何にしようか訊ねたら「通学用の自転車が欲しい」という。そんなもんでいいのかと思いながら一緒に見に行って、お気に入りを買ってやった。ただそれはママチャリに毛が生えた程度の、如何にもフツーの自転車であった。心根の優しい次男君は、ジジババの負担を考えて、あまり値の張らないスタンダードでガマンしたのだろう。
その自転車でおよそ1年くらいは通った。そこは花も恥じらう多感な高校生。段々ハイレベルが欲しくなったようだ。
それをジジババにおねだりして来ないのが彼らしい優しさ。お父さんに交渉して、それはそれは豪華なレース用の超軽量アルミ製ハイクラスチャリを奮発させた。前かごもなければ荷台もない。カバンはどこに乗せるのか?カバンはリュックなので、背負ってチャリに乗るという。
雨が降ったら、カバンの上から雨合羽を羽織るので教材が濡れることはない、と鼻を高くして言う。
ジジババのプレゼントチャリは、家の横の方にくすぶっている。それにしても、これほど豪華な、高価なものが欲しかったのに、高校入学の時点では、ジジババの出費に遠慮したのか、はたまた自転車通学が続けられる自信がなかったのかもしれない。今では、こんな素敵なレース用チャリを駆って颯爽と通学。それが昂じて、今では60kmもある父方の里へ何度も往復するほどのチャリマニアになっている。
それはそれで、青春の1ページを楽しんでいるのだから大いに結構である。
今年の暑さには耐えかねるのか、学校帰りに「ばあちゃん、何かない?」と家に上がり込んで冷蔵庫をあさる。
図体は大きく、デッカい靴はいて高級チャリに乗ってはいるが、中身はやはり高校3年生。腹が減っては戦にならないようだ。それが面白いことに、まるで草食系。トマトやキューリに目がない。牛乳も彼が寄ったら半分になってしまう。
そういえば、かつて広島カープのエースを張り、213勝を上げ名球会入りした北別府學投手は、高校時代往復30kmを毎日自転車通学してその足越と忍耐力を鍛えたという話を思い出した。それほどの大物になれなくても、高校3年間のチャリ通学体験は無駄にはなるまい。