さくら色にライトアップされた錦帯橋 いわくに寿司の向こう、遠くに錦帯橋が
我が町の数少ない名所や名物が、夕方のNHKローカル番組に映し出された。
NHK山口放送による、地域情報番組の特集として組まれた「岩国版」のワンシーンである。
さくら色にライトアップされた錦帯橋も、最近では様々な色の組み合わせによるカラー演出が見事で、昼間のモノクロに比べると、地元民ながらオッ!と思わせる別の姿を見せてくれる。
いつも食べ慣れている「いわくに寿司」は、別名「祭り寿司」とも「殿様寿司」とも呼ばれている。
独特な手法が営々と引き継がれているこのいわくに寿司。その昔母が作る「ハナさん寿司」は近所では味の良さが評判であったのを覚えている。
お嫁入や棟上げなどのお祝い事で、お客の食事接待やお持ち帰りのお土産などに使われた。ハナさんの腕は重宝され、わざわざ頼みに来て前夜から仕込みをしたりしていた。主な仕込みは、表面にちりばめる魚の酢締めという作業である。酢っぱ過ぎず辛すぎず、ちょっと砂糖味を効かせた甘ずっぱさが、寿司全体の美味しさの評価となる。人数分に合わせて1升2升のご飯を炊き、長方形の寿司枠に寿司ご飯を敷き詰める。季節に応じた野菜や錦糸卵、シイタケ、レンコン、それに昨夜から仕込んだ魚をちりばめる。そうして一段目が完成。
レンコンの葉っぱを乾かした仕切りを敷き二段目を作る。その繰り返しで5段目まで重ね挙げて、寿司枠の蓋をして重しを載せて締めていく。
問題はその後の、寿司枠を抜くときの力加減と要領によって形が決まってくる。蓋を片足で踏みつけ、力が偏らないように対角線に平均に少しずつ引き上げていく。ここは男の仕事である。
思わぬところでいわくに寿司の「作り方レシピ」になってしまったが、味の方のレシピは、義母ゆずりの確かな腕を持つ山の神に任せよう。
このいわくに寿司は、標高200mの高さにある山城で、籠城戦を想定した保存食の一つとして古くから伝わっている伝統食でもある。酢で締まっているので、少しの量でも食べ終わった後でお腹が膨らむ思いがする不思議な食料でもある。食べ過ぎにご用心!!
それにしても、見慣れ過ぎて感動も忘れてしまった風物や、食べ物を、改めてテレビ画面で見せられると意外や意外、とっても素晴らしいものに見えてくる。気持ちの奥底に、素晴らしさが織り込まれているということなのだろうか。