ひどい男だった・・・・・数千万円の横領を美夏のせいにして彼女を切り捨てたのだ
体の関係が無くても愛していたのにー
仕事を失い 多額の金を立て替えてくれた両親からは勘当されて 美夏は働き続けてきた
男は帰国しても連絡してくることなく急死する
美夏にとっては地獄の五年間だったのに
彼は一緒にタンゴを踊れない妻との間に 美夏が傍にいた時さえ子供を作っていたのだ
ちゃんと刑事事件にすれば身の証が立てられたかもしれないのに ヒロインの美夏は愚かである
自分だけしか見ていない男の顔があったのだと思い込みたい
自分はそれでも男にとって特別な存在だったと
ただ騙され利用されたのではー余りに自分が愚かすぎるから
そうだから騙されたのだろうに・・・・・
美夏はこれからも死んだ男の影を引きずっていくのだろうか
また他の男に騙され利用され続けて一生終わるのだろうか
「現実との三分間」
ブエノスアイレスで娘は結婚する
向こうの男と
飛行機が駄目な夫は娘の結婚式に出ることもできない
あんなに娘を可愛がって育てたのにー
娘の結婚式に出る為にブエノスアイレスに向かった典子は 娘から信じられない話を聞かされる
夫のしようとしたことゆえに 娘は家に戻ってこなかった
典子自身にも蘇る嫌な記憶
「フーガと神秘」
残った片目も潰されそうだったところをバンドネオン弾きの老人に救われた
猫は老人に育てられるが やがて老人は死に 猫は同じアパートに住むノーチェという男と暮らすようになる
彼は殺し屋だった
やがて猫に蘇る記憶
幾度 生まれ変われば恋はかなうのだろうか
「ドブレAの悲しみ」
夫の浮気相手の女性から これは受け取れませんと返された手切れ金が30万円
ちょっと贅沢な服を買い少し使っちゃったけど やはりあなたのお金だからと鈴子は渚に返そうとするが 彼女も受け取らず いつか話は二人で旅行して使おうよと
女二人は不思議な意気投合をしてしまう
旅先で渚がしたかったこと
バンドネオンを弾いてー
いろんな思いが流れていく
「バンドネオンを弾く女」
ホナミストなる言葉ができるほどのファンがいた作家は・・・姿を消した
それから20年
ハノイで孝子はその作家を見つける
そうして作家の思い出話を聞くのだが
真実はちりばめられ砕ける
それも一つの愛の成就なのだろうか
幸せは人の数だけある
「サイゴン・タンゴ・カフェ」
あとがきによれば著者はタンゴにひかれ タンゴの音符を言葉に置き換えたらーそんな思いで小説を書いたそうです
切ないバンドネオンの響き
夜を切り裂くように甘く切なく哀しみを帯びて流れる
時に場違いなほど明るく
そして沈むように暗く混乱した美しさ持ちて
愛も異国と似ている
人は見知らぬ国
幻めいて