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翌朝、ジングクは、ジンガンに謝りました。
昨日は言い過ぎた・・・と。
「お前はもう立派な大人なんだよな。お前を信じて黙って見守るよ。」
でも、自分が言ったこの言葉を、すぐに後悔することになるんです、ジングク。
だって、オム刑事と交際を順調に続けているとばかり思っていましたからね、この時は。だから、信じて見守ると言えたのです。
二人が別れたと知ったのは、数日後のこと。オム刑事から告げられました。
オム刑事は、理由は言いませんでしたが、やはりジングクにはきちんと言っておかなくてはと思ったのです。
聞いた直後は、がっくりした気分だったジングクですが、徐々にムヨンの事が気になって来たのは仕方がないことですよね。
ムヨンは、セランからのパブの話の返答を求められました。
で、きっぱりと断りのメールを入れました。ジンガンの希望ですから。
セランから、その理由を聞かれ、
「ある事を学ぶのに妨げになるから。」
と答えました。
何を学ぶの?・・・と聞かれ、いい人になること・・・と答えました。
似合わない・・・とセランは言いました。
ユリの送検が決まりました。殺人罪で・・・です。
そして、ムヨンはもう1週間の補充捜査が必要と言う決定が下りました。
強力3チームの面々は、ジングクがユリに関する情報を共有しなかった事に不満を抱いていました。結果的にムヨンを誤認逮捕してしまったわけですから。
でも、彼らはお咎めなしとなったことで、ほっとしています。
ジンガンとムヨンは付き合い始めました。
とても初々しい雰囲気で、学生のような雰囲気です。それまでのムヨンとは全く表情が違います。
拗ねたような、世の中全てを分かってるような表情は消えています。
取り調べの約束をしているのに、ムヨンが現れないので、ジングクは家に行ってみました。
そこで、見たのは、黄色い菊の鉢植え。
実は、数日前ジンガンも同じ鉢植えを買って来ていたのです。
それを見た瞬間、二人が会っているとジングクは察しました。
不安がこみ上げて来ました。
その日は、徹夜すると言って出勤して行ったジンガン。
翌日、毎年恒例として兄と妹との遠足の為に休みを取っているから、その為に仕事を済ませるとジンガンは言っていました。
まさか、ムヨンと?・・・と思ったジングクは、確かめるために電話しました。そしたら、同僚との会話も聞こえたので、徹夜は嘘じゃないとほっとしました。
その時、ムヨンが帰宅して来ましたし、二人が一緒じゃないのかと思ったのは自分の早とちりだとジングクは分かりました。
それでもやはり、ムヨンにきっちりと言いました。
「妹に会うな。」
何故?・・・とムヨン。資格が無いから?・・・と。
「資格が無いからじゃ無い。相手がお前だから反対なんだ。二度と会うな。これは頼みじゃ無く、警告だ。」
ムヨンは、又夢を見ていました。同じ夢です。
ストーブの上で薬缶が煮えたぎっていて、銃が見えて、父親を撃とうとしている・・・。そして撃たれる。
そして、ジンガンの自分を呼ぶ声がする。
目を覚ますと、本当に傍にジンガンがいました。ジンガンは、徹夜仕事明けで家に戻る途中、立ち寄ったのです。
記憶がどんどん鮮明になっているとムヨンは思いました。
5歳までの記憶は全て失われています。
最初の記憶は、一人で歩いている記憶。足も痛いし空腹で不安だけど、歩き続けているのです。
誰かを心配していて、自分を待っている気がして、歩くのを止められないのです。
どこかのおばあさんが保護してくれたのですが、1年も経たずに亡くなってしまい、施設に預けられたようです。
その時、ポケットに入っていた絵を、ムヨンは今でも大切に持っています。
父と母、自分と弟の描かれた絵でした。
弟
ムヨンは、自分は捨て子じゃないと思っていました。迷子なんだと。
それが彼の心のよりどころなのかもしれません。
ジンガンは、その気持ちがよく分かるような気がしました。
8歳の時と20歳の時、家族を探したようですが、見つからなかったとムヨンは言いました。
「怖いのね。夢が事実だったら・・・って。」
と、ジンガンは言いました。
何も答えられないムヨンを、ジンガンはしっかりと抱きしめてあげました。
家に戻ると、ジングクが海苔巻きを作っていました。二人の遠足の時は、必ず持って行くことになっていました。
ジンガンは、済まなそうに言いました。
お寺には行けそうにないの・・・と。仕事が立て込んでて・・・と。
勿論、嘘でした。でも、ジングクは信じました。
ジンガンは、ジングクの作った海苔巻きを持って、ムヨンと出かけました。
ヘサン・・・ムヨンがいた施設にです。
ジンガンも幼い頃、ジングクと住んでいた事がある町でした。
ジングクが毎年この日に行っているのは、お寺。
ジンガンの両親が眠っているところのようです。
今年は、ジンガンからの連絡で、タク・ソジョンが合流しました。
ジングクが犯人を追跡する過程で、犯人が死んだ一件は、犯人が崖から転落したと言う事で収拾されているようです。犯人は、死刑になると思われていたようです。だから、ジングクは何のお咎めもなかったのです。時代もそう言う時代でした。
だけど、ジングクは自分を責め続け、荒れたようです。で、結局チームは解散してしまったのです。それをイチーム長は恨んでいるんですね。
一番辛いのは、刑に服せないことだ・・・とジングクはタク・ソジョンに言いました。
「最低限の償いもできないのが何より苦しかった。」
タク・ソジュンは、あなたの所為じゃ無い・・・と言いました。任務を全うしただけだと。
「自殺じゃない。事故でもない。崖から転落したんじゃない。そもそも逃走なんてしてない。俺が拳銃で撃った。」
やっぱりね・・・。
ムヨンはシスターに聞きたい事があったのです。
自分がこの施設に来る約1年前、ヘサン警察署の警官が男の子を探しに来たようです。その後、ムヨンが来て、探している男の子と条件が合うので、園長が連絡したら、既に男の子は見つかったと言われたのです。
それでも、8歳の時、ムヨンは警察署に確かめに行ったんだそうです。父親だと思ったから。
でも、違ったわけで・・・。
「でも、何故かここが始まりに思える。だから、又来た。」
ジンガンは、幼いムヨンがここで過ごしていた時間を思うと、自分が如何に幸せだったかを感じました。
ジンガンは、中学生の時、自分が兄や姉と血のつながりが無い事を知ったのです。
その時、それまであった出来事の全てが理解でき、納得できたようです。
例えば、アメリカに留学している姉が行く前にジングクに言った言葉。
“兄さんの妹は、あの子じゃなく私よ”
自分は捨て子なのか、迷子なのか・・・ジングクには聞けませんでした。
思い悩む事すらジングクに申し訳ないと思いました。
一番辛いのは、ジングクにお礼を言えない事・・・とジンガン。
他人の私を育ててくれてありがとうと言いたいのに・・・と。
この事を口にするのは、ジンガンも初めてでした。死ぬまで言えないと思ってきたようです。
ムヨンは、そっとジンガンを抱きしめてあげました。
ジングクの大きな愛情を、二人とも充分感じていました。
そしてその日、ムヨンとジンガンは床を共にしました。