今から10年余り前、子どもの学力調査、いわゆるPISAで、4年連続世界1位に輝いてから、やたら注目された国がフィンランドだった。
「フィンランド 豊かさのメソッド」(堀江都喜子著;集英社新書)は、その学力調査のよさや国の秘密を知りたくて、その頃買った本だった。
この本を買ったときの帯には、
「この本の帯には、貧困化する日本と対極 格差なき成長の秘密とは?」
「子どもの学力調査(PISA)1位、国際競争力ランキング4年連続1位」
「現地の大学院で」学んだ体験からみえた、『教育力』『福祉力』で発展する国の真実」
などという言葉が並ぶ。
以前は、学力のことばかり考えていたので、第4章まである内容なのに、第2章の「学力イチイのフィンランド方式」を読んだ後、興味が失せて全部読まなかったのだった。
今回、もう一度全部読もうと思って、最初から読み始めたのだった。
学力関係のところでは、日本と同様に小6、中3の義務教育制度だというが、教師の採用は学校単位だ。
学級規模では、1学級25人平均で、障害を抱える子や外国人の子なども一緒に学ぶようになっているという。
小3から外国語を始めるが、教師は専門の語学教師が教える。
学校では、母国語の他に、英語やスウエーデン語まで学ぶ。
ではあるが、公立学校の標準授業時間数は、日本が700時間以上なのに、フィンランドでは低学年500時間台、高学年でも600時間台。
日本よりどの国より授業時間は少ない。
しかも、塾や家庭教師もないそうだ。
それでも1位を連続したわけは、一番に教師の質の高さが上げられる。
そして、詰め込み式の勉強ではなく、できる限り自分から問題意識をもって勉強に取り組むように子どもたちを教育している。
自分の考えをもつことを大切にしているのだ。
こんなことを可能にしているのは、高い税金である。
食品で17%、他は22%、たばこや酒はそれ以上で、ガソリンの60%は税金なのだ。
その高い税金が、教育や医療、福祉などで使われる。
特に子育て支援は手厚い。
そして、面白いのは、社会保障が充実しているから女性の自立が容易なためか、離婚が多い。
それだけでなく、結婚の前に何年か同棲するのが常識だというのが面白い。
また、大人になって親と同居することは、親も子も考えていないのだ。
このようないろいろなことから見ていくと、大らかな反面、自分なりの考えをもってしっかり生きるということを大切にしている国なのだということが分かったりする。
著者の堀江さんは、大学院に留学して暮らした経験をもとに、日本との文化の違いをいろいろと示してくれる。
日本人もフィンランド人も恥ずかしがり屋だが、サウナでの裸や電気もない別荘の話などから、フィンランド人の方が大らかさももっていることも伝わってきた。
教育だけではなく、外国との文化の違いを知るたびに、日本のよさと足りなさを感じられる。
こういう本は、やはりそこに気づかされることが楽しい。