ON  MY  WAY

60代を迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされ生きる日々を綴ります(コメント表示承認制です)

死を見据えて生きる~「今日すべきことを精一杯!」(日野原重明著;ポプラ新書)を読んで~

2021-01-19 21:51:06 | 読む


なぜか、4年前に105歳で亡くなった医師、日野原重明先生の本を読んでみたくなった。
たくさんの著書があるが、手に取ったのは、「今日すべきことを精一杯!」(ポプラ新書)
この本は、もともと1990年に出版されたものだったのが、2017年に新書版となって発行されたものだと、あとがきに書いてあった。

内容を読んでいくと、日野原先生が自分の生い立ち、経験を語ることによって、どのように先生なりの医療に対する考えを構築していったかが、わかった。
年齢を重ねても、大切にしていたのは、患者の病気を治すのではなく、その患者の思いを大切にし、その人生を充実したものにするということだった。
人は必ず死ぬ。
それを見据えて、どう生きるかということが大切なのだという内容のことを繰り返し語っていた。

 若い人が歳をとった人を想像するのと、歳をとった人が“これが自分だ”として持つイメージには、非常に差があるように思います。高齢者は、私たちが思う「老い」という言葉の中にも、相当な若さが残っている。ところが、若い人の言う「老い」には、それがなくなった老いでしょう。しかし、私はこう言いたい。老いの中には若さがある、と。
 若い木は台風を受けてもしなって折れることはないけれど、老木は折れてしまう。しかし、その“老木の根っこから、なんと生き生きした緑の若木が、にょきにょき顔を出している”“老齢は、むしろ、そのようなものなのです”という言葉を、ドイツの老婦人M・ホワード・ド・ワルデンが残しています。若い人はその根元の芽を見ないで、枝が折れたり、枯れている老木を見て、それが高齢者だと思うのです。
 ところが、この生き残っている高齢者から言えば、“俺の中にまだそういう青春的な芽があるんじゃないか”ということが、ほのかに実感としてあるのです。


そうなのだ。
世間的に見れば、もう現役を引退した人間、高齢者となってきている私。
年齢は上がってきているが、心の中は、まだ若芽が繰り返し生えてきているのを感じることがよくある。

ただ、そう感じていても、確実に記憶力や体力は落ちてきている。
それに対しても、こう考えて生きようということを自らの経験とともに語ってくれている。

 認知とか記憶の能力というのは、歳をとったら誰でも落ちるのです。だから私もそれは自然だと考えながらも、どうすればトレーニングになるかということを一方では考えるのです。

 だから、そういうことが起こった時には、ああ、これにはこう対応しなくては、という作戦を考えながら、なるべくそういう自覚症が感じられないように、自分を鍛え、自信をもった生活をしたいと思っているのです。

これらの言葉は、今の私以降の人間には本当に大事な生き方の指針として、響いてくるものがある。

 さて、人間は歳をとっていく過程の中で、一人ひとりが自分を作り上げていくのです。そのためには自分の環境を自分が作らねばならない。そしてまた、新しい環境に大胆に入っていくとか新しい友達との交わりを持って、今までとは違う面での人間的なタッチを試みる行動が必要だと私は思います。

そして、何より大切なのは、やがて死ぬ、ということを漫然としてではなく、しっかりと意識した上で生きていくことなのだということを分からせてくれる。

 この「人間は死ぬことが運命づけられている生きものである」ということを本当に認知していると、死は人間の属性だと確認できるのです。
 若い人も、高齢者と同様、死に連なっていることを自覚する自意識を得られるのならば、死を考えることは、高齢者だけの問題ではなく、重病人だけの問題でもなく、若い人の問題でもあることが分かるはずです。その意味において、若い時代から“死の教育”に触れることが、その人に生きる意義を教え、その年代に応じて生き方の選択を考える人間にするのです。


若い時代つまり子どもの頃から高齢者にいたるまで、年代に応じて生き方の選択を考える人間。
なるほど、「年代に応じて」考えることが、まだ私にはできていなかったのだと思った。

日野原先生は、書名の「今日すべきことを精一杯!」のとおりに、自らしたいこと・すべきことを亡くなるまで貫いて生きていた。
私も、死に連なっていることを自覚し、今日という日を積み重ねて生きていきたい。
そう思わせてくれた一冊であった。
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