それは、夕食の時間、酒のつまみに乾燥小魚を食べているときだった。
ガリッ。
この小魚ジャリジャリするなあ…と思いながら、少しおかしいぞ。
下の前歯の辺りが変だと気づき、口の中の小魚をずらすために舌を使うと、歯にも当たった。
えっ?
歯の形が変わっている。
やけに歯が尖っているではないか。
…ということは、…歯が欠けたのだ。
急いで洗面所に行って鏡を見ると、正面右下の歯の一部が小さなU(ユー)のようになって欠けていた。
その後は、かけたところが尖ってしまって気になるだけでなく、そこに舌の一部が当たって、当たるところの舌が腫れてしまった。
すぐに歯医者に行きたかったけれど、歯が欠けた日は連休の合間の5月2日の夜だった。
さすがに連休は歯医者も休みだ。
そのため、3日4日5日…と毎日、違和感を我慢せざるを得なかった。
舌の腫れは続くし、食事中に口の中の同じ場所を何度もかむようになってしまった。
食べるのが何だか怖くなってしまった。
6日は土曜日。
世間的には休みなので、歯医者も休みだろうと思っていた。
ただ、どうにも口の中が気になった。
11時半近くになって、ふと、かかりつけの歯医者は、普通の土曜日は休みではなかったなあと思い出した。
たぶん連休中なので休みだろうけど、もしやっていたら、来週の早いうちに行けるように予約しよう。
そう思って電話してみると、休診日ではなかった。
それどころか、歯が欠けたから予約しようと思ったと言ったら、「今日の4時なら空いていますよ」との返事。
これはありがたい。
午後も診療してくれるのか。
さっそく午後4時、歯医者に行った。
医者は、「前歯は詰め物をしても取れちゃうので、削りますね」
と、機械を使って歯を削り始めた。
多少は響いたが、痛くはなく、まもなく尖っていた歯の部分はかなりよくなった。
おかげで、違和感はかなり減って、腫れていた舌の部分に歯が当たらなくなった。
めでたし、めでたし。
それにしても、乾燥小魚を食べるくらいの簡単なことで歯が欠けるとは、なんだか情けない。
8年前には歯が縦に割れるということがあり、歯医者に行ったら一気に抜かれたということがあったが、高齢者の体にはいろいろと金属疲労が起こっているのだなあ…、と思った。
歯ばかりでなく、目はぼやけて近くのものがよく見えなくなって困っているし、胃腸などにも違和感を感じているし、ふいに思いもつかないところに痛みを感じることもある。
ダメになる箇所が増えていくということは、加齢で仕方ないものなのだろうと納得してはいる。
着実に老人力がついていくなあ…。
ええい。まあ、カラ元気出していくぞ…っと!