白黒をつけむと君をひとり待つ天つたふ日そ楽しからずや 政次
牢屋の中に、政次が残した辞世の句
天とは、
天から、一生をかけて行うべき天命が与えられているというが…
碁を打つことで戦略を考えるふたり
この時間は政次にとってこの上ない喜びとなった
穏やかに、ありのままの自分で直虎に向き合えたのかもしれない
そんな思い出を胸に政次は、直虎を助けるため
自ら捕えられようと隠れ里を 後にしたのだろう
直虎は徳川軍に弓を引いた、政次を逃がしたという
近藤による策略で、捕えられていた
何とか牢屋から救い出そうと龍雲丸を呼んだ南渓和尚
『政次が死ねば、あれは死んでしまう…、翼がひとつでは鳥は飛べぬ
ふたりして落ち延び、そこで再起を計ればよい』
と、近藤との約束の政次を渡すことは実行しなかった
しかし、政次は自ら捕えられに来てしまった
自分一人の首と引き換えに、民や、井伊の館の皆が助かるのなら
直虎は、悪態を突いてくる政次の真意に気付いたろうか…
信じろ、おとわ… そんな声が聞こえてくる…
なつが政次の着物の袖に見つけた、ひとつの白い碁石は、政次に
政次から龍雲丸に、龍雲丸から直虎に
受け取った直虎は考えた
『政次、我は何をすればいいのじゃ、今さらそなたに何を…』
政次はすでに、牢から助け出してもらう事を拒否している
『俺は行かぬ…、それこそ小野の本懐、
井伊に嫌われ、井伊の仇となる。
私はこのために生まれてきたのだ』
そんな言葉を、牢に助けに来た龍雲丸に政次は投げ掛けていた
政次の父、政直は
『おまえも必ず我と同じ道を辿ることになる…』
と言って、数日後、亡くなった
そんな、父の呪縛を解くことは出来なかったのか
南渓和尚は、『誰よりもあやつのことが分かるのはそなたであろう』 と
先のことを直虎に委ねた
直虎は、いつかふたりで交わした言葉を思い出していた
『我を上手く仕え、我もそなたを上手く使う』
直虎に、もう迷いはなかった
『私が送ってやらねば…』
あとは、もう文字には出来ません…
が、政次が本懐を貫いて、この世を去った証しに…