第33回 嫌われ政次の一生
『俺は行かぬ、 俺一人の首でたくさんの血を流さずに済むなら…
それこそ、小野の本懐、
井伊に嫌われ、井伊の仇となる
私はこのために生まれてきたのだ』
処刑を前に助け出しに来た龍雲丸に牢で政次が伝えた言葉、
この言葉で、南渓和尚や、直虎は政次の覚悟を思い知ったのでしょうか
でも、刑場に足を引きずりながら入ってきた政次と直虎の目があった時、
政次にためらいはなかっただろうか、
直虎も、やはり政次を救おうと思わなかっただろうか
……
残念ですが、
そもそも、史実として残されたものは、
今川の犬として井伊に入り、井伊を落とすことを目論んでいた
政次が、井伊を追い立て、井伊谷城を奪い城主となり、
わずか34日間、徳川家康が攻め来て捕えられ処刑となった
これが歴史上の小野但馬守政次
ドラマが、史実を変えてしまう事はありませんでしたね
少しは期待してたのですが…
≪政次が処刑されて死んだ≫
この主軸はそのままでしたね
ただ、おんな城主直虎の脚本家、森下佳子さんは
嫌われ政次にしなかった
政次を悪人にして地獄に送ることはしなかった
森下さん、ありがとうございます、です
人知れず大切な人を守り抜き、悪者になることもいとわない
まるで、竜宮小僧のように…
直虎に捧げる一生でした
とても切ない一生ですね
『地獄へ落ちろ、小野但馬、地獄へ
ようもここまで我を欺いてくれたな
遠江一、日の本一の卑怯者と未来永劫、語り継いでやるわ!』
『笑止!未来など元より、女頼りの井伊に未来などあると思うのか
生きぬけるなどと思うておるのか
家老ごときに、たやすくたばかられるような井伊が、
やれるものならやってみろ
地獄の底から…見届けて……』
ふたりの最期に交わした言葉
これが、
『我をうまく使え、我もうまく使う』
ということだったのでしょうか
最期まで心の中を見せなかった政次、
それはまるで子供の頃、腰にさげていた能面のように…