四季の歌と暮らす

 年齢ごとに「一度っきり」の四季と、
旬(しゅん)のヨコハマを味わう「くりごとの集」です。

悲しいお月さん

2010-09-22 07:48:14 | 歌の花束
 21日の夕方、仲秋の名月がのぼりますと自分も空に浮き上がるような感じです。うりざね顔のお月さんから、近々お亡くなりになった方々がこの世を眺めているように思われます。身を切られる離別でのこされた人たちも見上げていることでしょう。
 先月惜しまれて死去された女流歌人、河野裕子さんを思い出します。夫君の永田和宏氏と共にお正月の宮中歌会始の選者をされたばかりで、64歳の早世でした。短歌の指導をされながら乳がんと10年闘われました。歌があればこそガンと闘うことが出来たと言われたそうです。彼女を失いわが青春が失われた感がいたします。彼女の4首に夫君の1首を。河野裕子さんさようなら。合掌

○大泣きをしてゐるところへ帰りきて
          あなたは黙つて背を撫でくるる
○一日に何度も笑ふ笑ひ声と
          笑い顔を君に残すため
○わたしには七十代の日はあらず
          在らぬ日を生きる君を悲しむ
○俺よりも先に死ぬなと言ひながら
          疲れて眠れり靴下はいたまま

●相槌を打つ声のなきこの家に
     気難しくも老いてゆくのか  永田和宏
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