『リーダーとは、さまざまな人の考え方、さまざまな力を生かして、一つの秩序と調和をつくりだしていく人といえましょう。それでこそ事が成るわけです。
その調和をつくりだすのに、いちばん大切なのが「忍辱(にんにく)」です。忍辱というと、じっと耐え忍ぶことのように考える人が多いのですが、それだけではありません。こちらは不動の信念を持っていて、それを貫くために、さまざまな考え方、さまざまな立場を受け入れる積極的な生き方が忍辱です。土佐藩主の山内容堂は、はじめ「忍堂」と号していました。それを、忍堂では人間がまだまだ小さいと言われて、容堂に改めたのだそうです。自分と反対の意見を主張する人に手こずると、「この人さえいなければ」と考えたくなりますが、「この人こそ、自分を磨いてくれるために、仏さまが遣わしてくださった人」と拝む。忍ぶのではなく、受け入れるのが本当の忍辱なのですね。
「気は長く、心は広く、腹立てず、自分は小さく、他人は大きく」という古歌があります。どれだけの人を受け入れられるかで、自分の器が決まります。「忍耐とは希望を持つ技術だ」と言われる人もいます。』
庭野日敬著『開祖随感』より