『最近はグルメブームというのでしょうか、おいしい店の紹介や、料理に関する本がたくさん出版されているようです。また外国に出かける人も増えて、各国の料理の作り方や、外国の有名なレストランまで、いろいろ紹介されています。
それで、最近は食事についてうんちくを傾ける人は多いのですが、逆に、心から感謝して食事をいただく人は少なくなっているのではないでしょうか。
世界でいちばんおいしい料理の名前は「空腹」という料理だと言われます。本当にお腹がすいているときには、何を食べてもおいしいものです。
捕虜生活を送った人が、「パンの耳がこれほどうまいものだったのかと初めて知った」と書いている文章を読んだことがありました。
いまの日本は、世界中からおびただしい食材を輸入しているのですが、その多くが食べ残され、捨てられているのだそうです。
臨済宗の松原泰道(まつばらたいどう)師は、「『食べ方』を知っている人はいくらもいるが、『いただき方』を知らぬ人が増えている」と言われています。まさにそのとおりで、まことに残念なことです。』
庭野日敬著『開祖随感』より