5ヵ月間2400キロ(日本の南北に相当)、未知の地へのわらじの旅を原稿用紙だと30枚程度に凝縮したこの作品は、叩けば叩くほど、噛めば噛むほど滋味が生まれて驚かされます。
お経と同じで受け手の心境に応じて反響が違うようです。昭和十八年発見された「曽良旅日記」と併読すると、翁のリズム豊かな名文もさることながら、ポエム一巻に仕立てるために書き出しから掉尾まで創作(嘘)をまじえた構成力には感嘆します。
それを証明出来たのは生真面目な秘書役の河合曽良であり、その旅の実録が見つかった賜物なのです。石川県山中温泉で曽良と別れた為にそこから結びの地大垣まで旅の実録がなく学者に苦労させるのも面白い。
大輪上智大名誉教授によると『おくのほそ道』に載る翁の50句のうち、旅で作った原句のままは18、旅の後で修正した句は21、旅の後で作った句が11もあるそうで6割以上は実録と異なる脚色の由です。
『おくのほそ道』は記録紀行文でなく創作ポエムなのです。
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