夕方の西の空に、不思議な形の雲が浮いてゐるのを氣にしつつ、隣町の八幡神社の祭禮で、やはり三年ぶりに奉納された江戸里神樂を觀る。演目は「天の岩戸」──亂暴者の須佐之男命(すさのおのみこと)に怒って天の岩戸に閉じ籠もった天照大御神(あまてらすおおみかみ)を再び外へ誘ひ出さうと、天宇受賣命(あめのうずめのみこと)は後に神樂の起源となる . . . 本文を読む
ラジオ放送で、觀世流野村幻雪(四郎)追悼の「俊寛」を聴く。狂言に登場する僧はまず墨染衣をまとった凡俗ばかりだが、この能の俊寛僧都も、絶海孤島にあって俗世の象徴たる都への執着煩悩がつひに斷ち切れない、充分すぎるほどの俗人であり、曲の作者は高尚さを装ひつつ痛烈に皮肉ってゐるやうでもあり、だとしたら狂言になかなか引けを取らない。執着や煩悩を拂ひ落としたら、ヒトは後に何が残るのだらう……?今 . . . 本文を読む