學生時分に一年間お世話になった日舞師匠が、初めて私の夢枕に現れた。
どこかの小さな、薄暗い舞薹を借りた發表會に私はゐて、師匠の二人の子ども弟子──そのうちの一人はドサ回りの子らしかった──が踊り終へたあと、師匠が客席から舞薹に上り、記憶にある聲で「本日はありがとうございました」と挨拶して幕が閉まりかけたところで、目が覺めた。
昨日は自身の手猿樂の活動計画を少し練ったりしてゐたが、大昔にお世話になったその日舞師匠は、これには全く關係してゐない。
どころか、二昔前にちょっと連絡をとったことがあるきりで、現在では全くつながってゐない。
私が踊りを習ってゐた學生時分にはすでに高齢だったが、まだご健在なのだらうか?
検索しても出てこない小さな流派なので、いまをここで知る術はない。
夢枕のなかでは、記憶にあるままの姿形、そして聲であった。